その43 ページ44
「……はい」
『あぁ、やっぱり居たんだな』
おずおずと襖の向こうから顔を出したゾムに言い、「何で解ったん？」という表情に『気配で何となくな』と返して笑った。
「…あの、組長」
「何だ」
「えと、その………」
「…おい、遠慮せず言え」
視線をうろうろ漂わせて言葉に詰まっていたゾムは、意を決した様に親父を見つめて言った。
「あの、組長。娘さんに、俺を遣って下さい！！」
しぃん……と、暫くの沈黙が続く。母さんは湯呑みを傾けたまま停止し、親父に関しては下を向いたりなどするせいで何を考えているのか全く解らない。息が重たくなる程の静けさを破ったのは、母さんが湯呑みを盆の上に置いた男だった。
「………っふふ、あっはは！！」
『え…母さん？』
「うふふ、あー可笑しい！」
「おい…お前どうしたんだ」
ケラケラと愉しげに笑い出した母さんは、一段落つけると笑い過ぎて目に浮いた涙を拭いながら言う。
「だって…娘さんを俺に下さい！じゃ無くて、自分の方を遣ってやれって言うんだもの」
「あ…やっぱ、変…でした、か？」
「嫌だな、誰もそんな事は言って無いよ。ユニークだけど、悪く無いからね」
…それは、褒めている内に入るのだろうか。怪訝に思って母を見れば、母さんはそっと私に口を寄せて耳打ちした。
「お父さんが私の家族に挨拶に来た時と同じ事言ってる。組の人間なのは今回はAだから、プロポーズされる側だけど」
『ぶふっ！！…へーぇ……親父ぃ、そうなんだ』
ニヤニヤとして親父に言うと、親父は「うるせぇ！恥ずかしい事を娘に教えるな」とごにょごにょ口篭る。『でもな』と私はゾムの肩に腕を回して親父にドヤ顔を決めた。
『残念だが、プロポーズしたのは私からなんだ』
「ほう……お前、やるな」
『親父の娘だからね』
たちまち真っ赤になるゾムにも笑い掛け、私は一度姿勢を正す。ゴホンと一つ咳払いをして、親父を真っ直ぐな目で見つめた。
『と云う訳で、父上にお願いしたい事が在るのですが』
「家族の事、だろ」
『…お察しでしたか』
「馬鹿野郎、俺は経験者なんだよ」
コツンと軽く私の額を小突いた親父は、「会食で良いのか？」と訊ねて来る。チラリとゾムに目線を遣れば小さく頷いたのが解ったので、『はい』と短く返事をした。
『何とか、見合いの様な形に出来ますか』
「任せとけ。俺を誰だと思ってる」
ヤクザの組長ですね、と言って笑えば、親父も不敵な笑みを作った。
「可愛い娘の為なら、不可能な事は無ぇよ」
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
