その4 ページ5
辺りに誰も居ないのを一応確認してから、ひょいと軽く地面を蹴って鍵の閉まっている裏門の柱に乗る。すぐそこを見れば、見慣れた黒塗りの車がきっちりと駐車して私を待っていた。いつも通り門から飛び降りて運転席に向かって手を振ると、内側から助手席のドアを開けてくれる。
「お帰りなさい、お嬢」
『あれ、今日永見さんなんだ。珍しいね？…あ、ただいま』
「ふふ、お嬢こそ今日は遅めですね。何かあったんですか？」
『んー、まあ担任に野良猫の世話を頼まれたみたいな感じかな』
「へぇ。それはまた、中々大変そうですねぇ…」
『…そうだね』
発進した車の外を眺めながら、取り留めの無い会話をして息を吐く。エミ兄ときたら、さっきから肩が揺れてて笑いを堪えきれてないのがバレバレなんだよね。
『永見さんってさぁ…実は結構性格悪いよね』
「はて、心外ですね。どうかされましたか？」
『いやぁ…別にもう学校じゃないし、頑張ってキャラ保つ必要も無いんだけどさ……』
「はい、解っていますよ」
愉快そうに隣で笑う“お兄ちゃん”をジトリと見て、私はもう一度溜息をついてから切り出した。
『所でさぁ』
「はい」
『…後部座席に乗り込んでる野良猫は何なの？』
「おや、お気付きでしたか」
『気付いてるの知ってて言ってるでしょう』
意地の悪い事を言う運転手を横目で睨み、前を向いたたま後ろに声を掛ける。
『で、何しにうちの車に滑り込んだのかな？……鳥井君』
暫く返答が無かったが、大分時間が空いた頃に後ろで何かがもぞりと動き、小声で問い掛けて来た。
「…お前って何者なん？お嬢とか車通学とか」
『先に私の質問に答えてもらって良い？』
「……猿に校舎裏の方にある門飛び越えたら、そこにある車に乗れって言われてん」
渋々と言った様子で事情を話した鳥井を一瞥し、私は視線を運転席に戻す。
『さては永見さん、猿山先生から話聞いてたね？』
「ふふ、バレてしまっては仕方無いですね」
『最初に言おうよ、そういうのは』
まさか、私生活まで面倒見ろって意味では無いだろうな。そうだとしたらとんだ無責任教師だ。やれやれと首を振った私は、自分も質問に答えなければフェアで無いなと思い、鳥井を見て言った。
『車に乗っちゃったなら、危険だし途中で下ろす訳にもいかないから家まで来てもらう。……ただし、私の素を知っても絶対に騒がない事』
そろそろ私も、この窮屈で仕方が無い“優等生”の仮面を脱ぎたいからね。そう言って一つ欠伸をした。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
