その37 ページ38
目が覚めた時、視界に飛び込んで来たのは白い天井だった。忙しなく人が動いている様な物音と、つんと鼻を突く薬品の匂い。窓から外を透かし見れば、黒々と夜の深い色が広がっている。……病院か。そんな事を思って、ゆっくりと身体を起こした。
『…んお？』
痛み止めの薬でも打ってあるのか、腕にも腹部にも傷の痛さは感じない。代わりに、動かそうとした手が何かに掴まれている感覚があった。
『おいおい……何やってんだお前』
一人呟いて、そっとそのサラサラな茶色の髪の毛に指を通す。救急車に同乗して来たのだろうか。すやすやと寝息を立てて眠っているゾムの横顔を覗き込んでいると、ガラリと病室の扉を開けて看護師のお姉さんが入って来た。
「あら、起きたのですね。具合はどうですか？」
『大分良いです』
営業スマイル、営業スマイル。パッと笑顔を作って『治療ありがとうございました』とお礼を言うと、お姉さんは「当然の事をしたまでですよ」と微笑み返してくれる。
「私達は、怪我をされた方や病気になられた方を治療するのが仕事ですから」
『あ、の……腕は…』
「…ご家庭の事情でしょう？一介の看護師が口を挟む話では無いですから、此方からは訊きませんよ」
『あ…ありがとう、ございます』
そんな事より、と言ったお姉さんは、私の手を握ったままのゾムを見て優しく目を細めながら私に伝えて来た。
「ありがとうなら、その男の子に言ってあげて下さいね。彼、貴女が送られて来てからずっと心配そうにしてましたから」
『……本当ですか』
「ええ。手当てが終わって、お家の方から飛んでらしたお兄さん達が帰ってからも、“目ぇ覚ますまで待たせて下さい”ってね」
…そんな事が。と言うか、“お兄ちゃん”は様子見に来てくれていたのか。今は何時かと時計を確認すれば、もう時刻は午前二時を回った所だった。
『それは…嬉しいです』
ポソッと呟いてゾムの手を握り返すと、お姉さんはクスクスと笑って私に言う。
「うふふ、好きなんですねぇ」
『うへっ！？いや、あの…まぁ』
「良いじゃないですか。青春は中高生の特権ですよ。今の内に目一杯楽しんで下さい」
『…は、はい』
自分で言うのは良いが、他人に言われるのは恥ずかしいな。サッと俯けば、お姉さんは「では、また何かありましたらナースコールで呼んで下さいね」と言い残して去って行った。静けさの戻った部屋で、私は再びゾムの頭に手のひらを置く。
『…可愛い奴め』
ポロリとそう言葉が零れた。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
