その32 ページ33
『詰めが甘ぇんだよ、馬鹿』
背後からAの声がして、驚いて振り返る。刹那、倒した筈の男が振ったナイフが俺のフードと数束の髪を切り裂いた。その衝撃でフードが脱げて、伸ばしっぱなしにしていた長めの髪がハラハラと肩に落ちて来た。
『い……ってぇなぁ、おい』
パタタ…と目の前に小さな血溜まりが出来る。ハッと息を呑んで見上げると、Aの右側のワイシャツの袖がスッパリ切れて、じわじわと生臭い赤が広がっていた。……ナイフがあのまま来ていたら。想像すると、ゾッとする。あの刃先は、確実に俺の大動脈を狙っていた。Aが咄嗟に手を伸ばした事により多少軌道が変わり、服と髪だけで済んだのだろう。……怖い。無鉄砲に飛び出して来ておいて、今初めて恐怖を覚えた。
『言っておくが、これは正当防衛だ』
Aの口調が、家での時と同じ物に戻っている。低い声で告げたAは、近接武器を所持している男とまず距離を取る為に一度肩の上部を殴って男のバランスを崩し数歩後ろに下がらせてる。Aはその後すぐに足を突っ張ると、男に体勢を立て直させる隙も与えずに発勁を打ち込んだ。その勢いで切られた部分から血がどっと出て、Aは顔を顰める。
「A…う、腕……」
『うるせぇな、ちょっと黙ってろ』
漸く細い声を絞り出した俺に対してAは舌打ちして怒鳴り、チラリと俺達の方を見て女子生徒の方に言った。
『後輩ちゃんは早く逃げな。ここは私達が何とかするから』
「え…でも」
『早く！！』
「は、はいぃ！」
腰は抜けてないみたいやから、良かった。何なら俺よりよっぽどしっかりしとるやん。これなら一人で避難出来るだろう。
「痛いなぁ…最近の若い子は怖いったら」
飛ばされていた男はゆらりと立ち上がり、憎しみをたたえた目でAを見た。怪我したAを護って戦わんといけないのに、俺の身体はどうしても恐怖が勝って戦闘態勢を取る事が出来ない。情けない自分に腹が立つ様な泣きたい様な気持ちでいると、男がAに向かって喋る。
「どうして邪魔するのかなぁ？殺しちゃうかも知れないよ？」
『さてね、死ぬのはどっちだろうな』
変に冷静に答えたAは、血が抜けたせいか蒼白になり汗の浮いた顔でも不敵に笑い、裂かれたシャツの袖をそのまま破り捨てた。
『これが何だか解らないとは言わせねぇ』
驚きのあまり、俺は目を見開いた。Aの右の二の腕辺りには、組の成人した者にしか無い筈のアサガオの刺青が在った。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
