その30 ページ31
翌朝少し寝坊した事に気付いた私は、私を抱えたまま寝こけるコネシマを引っ剥がして制服に着替え、慌てて階下に下りた。トン兄は「遅かったな」と言いながらお弁当箱とおにぎりを差し出し、車の鍵を手に取った。
「どうせ学校までかかるし、車ん中で朝飯済ませぇや」
『わぁいトン兄最高、ありがとう！』
私とコネシマが二人で抜けた後、組の奴等が内容を訊いて来る事は無い。聞かれたく無いのを知っているから、態々尋ねるなどの無粋な真似はしないのだ。トン兄は水筒を私の鞄に突っ込みながら、のそのそと靴下を履いている私を急かす。
「知っとる知っとる。ほら、早よせんと一般生徒の登校時間に被んで」
『それは困る』
待ってよトン兄、と大きな背中を追い掛けつつキョロキョロと辺りを見回して、いつもの緑パーカーの姿が無いのに気が付いた。
『あれ、ゾムは？』
「もう行ったで。エミさんの運転で」
『…マジで言ってんのか？』
「何で嘘つく必要が在んねん」
阿呆か、と私の頭をはたいたトン兄に蹴りを返し、車に乗り込む。ちゃんと話さないとと思った矢先にこれだ。避けられている、と考えるのが自然だろうか。
『…トン兄』
「何や？」
『ゾム、何か変だった？』
トン兄は「あー…」と唸ると、言いにくそうに言葉を詰まらせながらも今朝の様子を報告してくれた。
「不機嫌と言うか、誰にも話し掛けて欲しく無さそうな感じやったで。お嬢と喧嘩でもしたんかと思ったんやけど、違うん？」
『いや……まあ、大体合ってるな。私はコネシマのお陰で多少吹っ切れたが…ゾムは、多分まだ悶々としてる筈だ』
「……成程」
青信号に変わった道にアクセルを踏んだトン兄は、ボソリと小さく言う。
「あいつを独りにしたるなよ」
……独り。その寂しさは、きちんと理解しているつもりだ。私はこくりと頷いて、『大丈夫』とトン兄に言う。
『独りになんてしねぇよ。初めてあいつが家に来た時から、あいつを護るって決めてたんだから。…それに、恋慕は想うだけじゃ意味が無ぇ。伝えて知ってもらわねぇとな』
トン兄は暫く目を瞬かせた後、何かを懐かしむ様に遠くを見る。「若いなぁ」と呟いたトン兄は、優しく微笑んで私を撫でた。
「後悔する前に、まず行動。やろ？」
『おう。勿論だ』
「ま、色恋沙汰に関しては俺は役には立てんけど……誰かを大切にしたいと思うのと同じくらい、お嬢自身も大事にしてくれたら嬉しいわな」
『…善処する』
ニッと笑って、私は車を降りてドアを閉めた。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
