その29 ページ30
『…私がどうしたいか、か』
ぽつんと反芻し、白い天井を見上げる。どうしたいかと訊かれれば、やりたい事は幾らでも在る。ノースリーブの服を着て出掛けたいし、部活に所属もしたい。“お兄ちゃん”の同伴無しで一人で街にふらりと遊びに行ったりもしたい。
『想像だけを膨らませても、どうせ私には出来ないから困ってるんだが』
「まあ…せやな。抜け道が在るんなら、探すのは付き合うけど」
『………なあ、孝行』
「ん、何や？」
コネシマに呼び掛けて、ついとその端正な顔を見る。空色の透き通った瞳の中では、私の影が蜃気楼の様にゆらゆらと揺れていた。
『私は間違ってると思うか？』
「お？…どういう事や」
『“自由”を求める過程で、“逃避”だけはしたくない。けどまあ、どうせ結婚するのなら好きになった奴としたいだろ』
「そらそうやろ。別に俺と将来を誓い合った訳でも無いんやし、お前の思う様に恋愛するのがええよ、うん」
一人合点して頷くコネシマは、不意にニヤリとして私の額に人差し指を当てた。
「敢えてこう言おう。A、お前は間違っとる」
『敢えてって何だ』
「まあまあ、人の話は最後まで聞くモンやで？もう一回言っとくわ。敢えて告げるならA、お前の考えは今ん所間違っとる」
『……根拠』
こいつと弁論するのは得策では無い。さっさと反論を諦めて続きを促し、コネシマの指を額から払う。
「お前はちゃんと個人でも強いし、頭も回る。けど、ちょっと親を大好き過ぎやな」
『いや別に過剰な程好きとは思わないけど』
「深層心理ではもしかしたら大好きかも解らんやろ。組の為とは言え跡継ぎどうのこうので自分が責任持とうとするなら、それはもう大好きやん」
『……その理屈は可笑しいだろ』
危うく納得しかける所だった。首を横に振って否定すると、コネシマは疲れた様に溜息をついてから、私の胸の上辺りに腕を回して私諸共布団に倒れ込んだ。
『うおっ！？おい孝行！！』
「あっはは、すまんすまん。でも俺は可笑しないで。組ん事を良く考えるのもええと思うけど、もうちょい自分に素直にならな。好きやろ？組長や姐さんの事も、俺らの事も……ゾムの事も」
最後に態々分けて名前を言ったコネシマの意地悪い笑みが浮かぶ顔にデコピンを入れて、『知ってるなら言うな』と呟く。
「ま、ちゃんとゾムには言うんやで」
『はいはい』
全く、こいつには敵わない。少しだけ晴れた気分に心を預け、そのまま久々に二人寄り添って一つの布団で寝入った。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
