その27 ページ28
『…そうかも知れないな。だけどもこれは、この家に生まれた以上は仕方無ぇ事なんだよ』
「それでも！！」
私の肩を掴む手に力を込めたゾムは、泣きそうな声を絞り出しながら喋る。
「同じ人間なのに…生まれた親が違うだけで、どうしてそんなに自分を押し込めて苦しまないけないん？そんなん……そんなん理不尽やん。何でお嬢は、自由な未来を思い描く権利すら無いみたいな言い方するん？」
……ゾムの言わんとする事も、解る。だが、私にも果たすべき責任というものが在る。これだけは、私の人生において避けて通れない事なのだ。私はゾムに微笑み掛けて、小さく呟く。
『それが事実だからだ』
コネシマ…基、捏島孝行と籍を入れる事に関して文句は無い。何なら安心安全の選択だとさえ言える。お互い気兼ねせずとも良いし、根が優しいあいつの事だ、躊躇は無くても丁重に抱いてくれるだろう。ゾムは私を倒したまま、小刻みに震える腕で私の顔の両脇に肘をつく。覆い被さった様な姿勢で、ゾムは悲しげな声を出した。
「じゃあ、何で簡単に同い年の男を自室に入れたりするん？襲われたりでもしたらどうするん？……今みたいに」
『…まあ、私の場合は二重の意味で危険だな。取られるのが純潔の方ならまだマシだが、命だったらそれは困る』
「俺が言うとるのは前者や」
ゾムの長い前髪が、サラサラと私の頬に落ちて来て鼻先を擽る。珍しく低い声で離すゾムからは、痛々しい程に真っ直ぐで冷たい空気が漂っていた。
「マシって何やねん。お嬢は、自分を大切にする気持ちをどっかに置いて来てしまったんか？」
重苦しい沈黙に、ゴトリと窓の外で何かが動いた様な音が響く。ふん、と私は鼻で笑って、そっとゾムの額に手を遣る。
『かもな』
「何で？俺らは…俺は、お嬢の事が誰より大切で、もっと……ずっと、近くで護り、たい…の、に」
ゾムの、焦ったり心が不安定になると吃音気味になる癖が出ている。…それだけ私の事を考えてくれていたとは、夢にも思わなかったが。フッと微笑んでから、瞬時にゾムの服の胸元を掴んでその体を引っ繰り返す。急に上下が変わった事にゾムが目をぱちくりさせて絶句している間に、私は立ち上がってヨレた襟の合わせを直した。
『私を護ると言うんだったら、まずは私に勝ってもらわないとな』
唖然としていたゾムは、ただ一言だけを呟いた。
「…一人で考えさせて欲しい」
頷いて、自分の部屋を後にする。……私は逆に、独りで夜を明かしたくは無い気分だ。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
