その26 ページ27
「跡…継ぎ……？」
何故、と問う様に短く呟いたゾムに視線を向け、説明をする。
『私の両親は仲睦まじく、長い間連れ添っているんだが……何が邪魔しているのかは知らないが、未だに子供は娘である私のみだ』
「それが、何か問題なん？」
『まあ、大いに問題だな。慣例的に、女の私は組を継ぐ事は出来ない。その上、もう母さんは出産適齢期を過ぎているから……危険を伴う高齢出産は、組としてはなるべく避けたいんだ』
「……つまり？」
もう粗方解っているだろうに、尚も訊いて来るゾムに薄く微笑んで、枕を前に押し出し頭を乗せた。
『私が跡継ぎを……男児を産む必要が有る。出来るだけ早く…それも、親父が健康で居られる間に』
それに、私にはこの家から逃れられない理由が他にも在る。そう言いながら、私はそっと右の二の腕辺りを摩った。
『刻まれた“家族”の証は、そう簡単には捨てられ無ぇんだよ。……例え私がそう望んだとしても、な』
黙り込んでしまったゾムを優しく撫でて、私はその頭をフードごと抱き寄せた。
『おいおい、私はこの件についてはある程度自分で納得してんだ。お前がそんな辛気臭ぇ面する必要なんて、これっぽっちも無ぇんだぞ？』
ポンポンとあやす様にフードを叩けば、ゾムは大人しく私に抱き着かれたままくぐもった声で言う。
「………なぁ、お嬢」
『何だ』
「跡継ぎ作るにも……相手とか、ちゃんと決まっとるん？」
『いいや。婿入りしてもらう事になる訳だからな、自分の両親どころか向こうの親御さんの同意も要る。高校卒業までに親父が気に入る奴に私が出会えなければ……』
「出会えなければ？」
何でそこに突っ込んで来るのだろうか。不思議に思いながら、何の気無しに答えた。
『コネシマと……孝行と籍を入れる。親父達には言ってないけど、私ら自体は了承済みだしな。幼馴染だし、一生添い遂げられる自信もある。…私達の間に在る感情が、恋情だとは言い難いが』
「…それ、虚しく無い？」
『虚しさは無い。が、倖せかどうかは解らない』
実際、小学生くらいまでは互いに好き合っていた。それが家族愛なのか恋愛なのか確証が持てなくなったのは、不思議と思春期に入ってからだったのだ。それが寧ろ自信の根拠とも言えるが。目を細めて笑った私を数秒間凝視したゾムは、ガッと私の肩を掴む。直後、背中が布団に付いた感覚が有った。
「お嬢は、自分を諦め過ぎや」
………押し倒された。頭が正しい処理するのに、そう時間は掛からなかった。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
