その25 ページ26
『入れよ。……私も、お前に話したい事が在る』
「ん」
スっと綺麗な所作で襖を開けたゾムを、だらけた姿勢のまま招き入れる。足を使って仕切りを押し、『布団持って来い』と顎で示した。
「え……でも」
『良いから。どうせ、長くなる。二人で一緒に夜更かしでもしよう』
「組長に知られたら殺される…」
『私が言わなければ良いだけだろ』
「………解った」
言い負けて布団を奥から運んで来たゾムは、きちんと仕切りを閉め直して私の隣に敷く。枕を胸の下辺りまで引き寄せて上半身を起こし気味にした私を真似て、ゾムも布団に寝転んで頬杖をついた。
『言いな。内容は、大体察しがついてるから』
「……おん」
暫く迷う様に視線を宙に惑わせていたゾムは、一回大きく深呼吸してからパチリと目を開けた。
「あんな……さっきシャオロンが言ってた、“中学の途中くらいから毎日つまんなそうやった”っていう話が…その………お嬢さえ良ければ、聞きたい」
私はフッと軽く笑い、横に寝そべるゾムの方に顔を向ける。
『勿論。…私も、それをお前に話そうと思ってた』
え、と言う様にゾムの口が僅かに震える。少し息を止めてから、私はぽつりぽつりと一言ずつ喉の奥から押し出す様に話し始めた。
『今までの人生、私は“友達”と呼べる様な人を持った事が無いんだ。…話し掛ける前に、相手から逃げられていたからな』
「…な、何で？」
『ヤクザの娘だからだよ。中学までは、地元の学校に通ってたから……ま、悪い意味で有名だったって訳だ』
言葉に詰まったゾムに、一つずつ過去を話して行く。クラスメートの保護者や教師陣からは、常に色眼鏡を掛けて見られていた事。定期テストで良い成績を修めれば、学校に組から圧力が掛けられたのだと噂された事。休日にグル兄やトン兄と出掛けているのを目撃され、売春をしているのでは無いかと言われた事。直接手を出せば後が怖いからと、物理よりも証拠の無い精神攻撃が多かった様に思う。だから、組も対処は出来なかった。
『…だから、私は“優等生”を目指した。私も、普通の女の子になりたかったんだよ』
友人と下らない話なんかをしながら、放課後にぶらりとどこかへ遊びに行きたい。一人で自由に外出したい。極道の娘に生まれた事を恨んだ日は、計り知れない数になる。
『だけど、親父達は…私を一生この家に閉じ込めるつもりだと思う』
「…理由は？」
掠れる声で訊いて来たゾムに、私は虚空を映す瞳を返した。
『…跡継ぎが必要だから』
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
