その21 ページ22
『良いか、希……いや、鳥井君』
「んへっ！？はい」
トン兄に運転してもらって学校へ向かう途中、人差し指を立ててゾムを諭す様に話し掛ける。
『学校では、間違っても“お嬢”とは呼ばないでね』
「は、はい」
『私も君の事は“鳥井君”って呼ぶから、私の事は“A”って言って欲しい』
「…わ、解った」
それと、不自然さを感じさせない様に程々の距離感を保つ事も大切だ。それだけは学校で守ってくれと、指切りげんまんをしてもらう。それから少し表情を崩し、トン兄に『行ってきます』と言ってから車を降りた。
『まぁほら、学校の中では良い子にしてれば誰かに目を付けられる事も無いから。困った事が在れば、隣の席だし遠慮せず言ってくれて良いよ。それくらいなら、転校して来たばっかりなんだし怪しまれたりはしないから』
「おん」
例の如く裏門を飛び越え、ゾムがちゃんと追い掛けて来るのを確認する。私は腕の力を使って体を引き上げる様にしないと足が柱の上まで届かないのだが、ゾムはジャンプ力だけで門の上に立てるらしい。運動神経良いんだね、とコメントすれば、ゾムははにかむ様に照れ笑いをした。
『あぁそうだ、言うの忘れてた。車通学は人に見られない様にしろって猿山先生から言われてるから、普段から私はこの時間に学校に来てるんだけど……まだHRまでは三十分以上あるんだよね。読書用の本とか持ってる？暇潰しが無いと、やり過ごせないと思う』
「本は……全然読まへん。し、あったとしても全部実家や。何で出る前に言ってくれへんかったん…？」
『ごめんって。三冊くらいロッカーに入ってるから、一冊貸すよ』
「え……すご」
『伊達に優等生やってないからね』
ふふっと口許に手を当てて笑うと、ゾムは感心した様子で呟く。
「…ほ、ほんまにお上品に見えるわ」
『そう見せてるんだってば』
兎に角、授業はなるだけ全部起きててよね。そう言って横目でゾムを見れば、ゾムは「う…」と顔を顰めた。
「…寝たらダメなん？」
『良い子は眠くてもあの手この手を使って目を開け続けようと努力するんだよ』
「それ上手く行くん？」
『失敗する事もままある』
「え、起きれて無いやん」
『その時はその時だね。鳥井君が寝そうだったら、私が起こしてあげるから大丈夫』
えー嫌やぁ、と嘆くゾムに平和に生きる為の処世術だからと言って説得し、出来るだけ真面目に授業を受けるように約束する。辺りを見回して人が居ないのを確認し、昇降口へ向かって足を速めた。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
