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龍「きっ、き、ぇい、!」
海「いや、綺麗って普通花嫁に言うセリフだろ。」
あきれながら訂正してもまだ「綺麗」を繰り返す兄ちゃんの目は、いつも以上にキラキラしている。純粋っていうべきか、単純っていうべきか。
そんな兄ちゃんとは反対に、結婚式当日の今日初めてタキシード姿を家族にさらすことになった俺は、気恥ずかしさでもう死にそうだった。
海「…俺、向こうの家族にも挨拶に行くから。」
ついに恥ずかしさに耐えられなくなって、両親と兄ちゃんに背を向ける。「じゃあ式場でな!」とすでに素面とは思えないテンションの親父の声を背中に聞きながら、俺は逃げるように新婦の控室に向かった。
向こうの両親とも軽く話をしていると時間はすぐに過ぎて行って、あっという間に式の時間になった。
もともとそこまで盛大にやるつもりもなかったから、式場にいるのはお互いの家族とかなり親しい友達だけ。なじみのある顔ぶればかりなのに妙に仰々しい空気がくすぐったくて、俺は式が始まってもなかなか視線を上に向けられなかった。
「ちゃんと背筋伸ばして。お義兄さんのスピーチ、始まるよ。」
まるで別人みたいにきれいな化粧をした彼女…もとい、嫁さんに隣から肩を叩かれて、俺は慌てて椅子に座りなおした。今から、今日一心配な時間が始まる。
あれから俺は、兄ちゃんのスピーチ練習を見ていない。心配な気持ちは変わらなかったけど、兄ちゃんにも兄としてのプライドがあると気づいたからだ。兄ちゃんのことだから、きっと死ぬほど練習してきただろう。
司会者に紹介されて、母親に車いすを押されながら兄ちゃんがマイクの前に来る。着るのも一苦労だったはずのスーツに包まれた極端に華奢な体は、いつもよりもっとこわばっているように見えた。
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雅 - ↓もしよろしければ書いていただけると嬉しいです。ご検討のほど宜しくお願い致します。 (2022年10月30日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 赤が酷いトゥレットに苦しむお話。白目を剥いたり、身体が勝手に暴れたり、大きな声が出たり、意味のわからない声を出し続けたり、首振りが止まらず吐いたり。症状でストレスが溜まり、ストレスで症状が悪化する負のループ。友達も出来ず双子の黄だけが唯一の味方。 (2022年10月30日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
こまち - そして貯めたお金で誕生日プレゼントを買おうとしていた。しかし何も知らない桃はその日も緑を叱る。そして翌日。プレゼントを買った緑はバイトを終え急いで帰ろうとし交通事故に遭う。病院に駆けつけた桃は冷たくなった緑と対面。全ての事実を知った桃は泣き崩れた。 (2022年10月26日 18時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
こまち - 桃×緑(兄弟)のお話をお願いします。早くに親を亡くし2人で暮らす。弟の緑は最近夜遅くまで帰ってこず桃との関係はピリピリ。でも実は家計が苦しくても自分を養ってくれる桃のため学生の緑は複数のバイトを掛け持ち夜遅くまで働いていた。→ (2022年10月26日 18時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
ぺえ(プロフ) - こんばんは!リクエスト失礼します🙇🏻♀️「やさしいひと」がすごく好きなので、同じ設定でまたお話書いていただきたいです!よろしくお願いします、おさと様のペースでこれからも更新頑張ってください、楽しみにしてます! (2022年10月26日 0時) (レス) id: 8c7e5fe0be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年10月16日 19時