89松 ページ38
「…はしょってたって、どこを?」
「母が亡くなった後、私はすぐに祖父母の家に行った訳ではなくて、少しの間父の元に引き取られていたんです」
中学後半から高校になるまでの間、Aは父親と二人暮らしをしたいたらしい。この時点で祖父母は介護が必要だったらしく、まだ中学生だったAには荷が重すぎるという事で、一時は父親に親権が移ったと。
「父の方から引き取るって言ってたんですけど、向こうがそう言うのならいいかなって思って私もその時は了承したんです。でも、私が原因での離婚でしたから、当然反りが合う訳も無く、少し経ってから色々ゴタゴタしてしまいまして」
「……どうゴタゴタしたのかは聞いちゃ駄目?」
「………ごめんなさい」
やっぱり深い所はまだ教えてくれないようだ。知りたい気持ちはあるけれど、今にも泣きそうなAの顔を見てブレーキを掛けた。
只でさえ目が酷く赤くなっているのに、これ以上腫れさせる訳にはいかない。
「こんな事になるなら最初から引き取らなければ良かったのにって思うんですけどね」
「…絶縁とかしたの?」
「いえ、そこまでは言ってないです。ただ、中学は義務教育じゃないですか。元々私の色素の事で先生や教育委員の方々から気を遣われてたので、そのゴタゴタによる私の異変はすぐに分かったようで…、先生やカウンセラーの方に色々聞き取りされてから私達は引き離されました。児童相談所の人が家に凸してきた時はビックリしましたね」
「…」
困ったように笑うAだけど、いやいや笑いながら話せる事じゃないだろ。
児童相談所についての知識はうっすらとしか知らないけれど、確か生活環境に問題があったりする家庭の子どもを保護するとこ…だったと思う。
てことは、やっぱりあの男に相当酷い事をされていたって事じゃねぇか。先生に見た目だけで何かしらされたって分かる程の事を…。
いままでAの過去を推測する際に何度も頭に浮かんだ言葉…。
“虐待”
「一松さん、顔怖くなってますよ」
「なってない。話の続き」
「もうおしまいですよ。引き離されてから一度も会ってなかったんですから。どうしてあの人が此処に来たのかは私にもわからないんです」
「……だから怖がってるの?」
「え?」
「何をされるかわからないから怖いんでしょ?俺と爺さんが此処に戻って来た時だって、あのおっさんが乗り込んで来たって思ったからあんなに怖がってたんじゃないの?」
「……」
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時