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この2年はありえないくらい目まぐるしい日々だった。
お弁当は毎日屋上で、毎日手作りのお弁当を持っていっていた。
そんなとき彼は「お弁当美味しそう」なんてキラキラした目で見ていた。
「いつも自分で作ってるの」なんてドヤ顔でいうと「僕のも作ってきて?」と首を傾げて言うから、作ってきたこともあった。
彼はニコニコとしながら私が作ったお弁当を頬張って「世界で一番おいしい」と言ってくれた。
るすくんと出会って初めての雨の日は屋上の扉前で待っていたら彼が来て、私が見つけた誰も来ない空き教室に案内した。
4階の一番端の薄暗い教室。
「雨の日は嫌い。ほら前髪も湿気てる。それに、屋上にもいけないもん」
不貞腐れて彼の肩に頭を乗せたこともあった。
二人とも進級したときは進路の話もして、
「A先輩は将来どうするの?」
その時、もう進路は決まっていたけれど言えなくて
「まだ、決まってないなぁ」とはぐらかした。
「るすくんは?」と話をそらしたけど、彼は「まだ、決まってないけど近くの大学に行けたらいいな」と言った。
それを聞いたらやっぱり私の進路の話なんてできなかった。
彼が来ない毎週月曜日の四時間目。
屋上から運動場で体育に参加する彼を目で追っていた。
サッカーでシュートを決めれば「おー!」と誰もいない屋上で拍手したり。
ソフトボールでホームランを打てば屋上に向かってピースしてくれて、それに手を振って返したり。
そんな姿を見ると、余計こんなところでさぼったりしてたらだめだよなんて罪悪感が増す。
それでも私は彼に会いたくてしょうがない毎日を過ごす。
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スピカ(プロフ) - わぁ、好きな作者さんがこんなに・・・! (2021年5月5日 13時) (レス) id: 990b6b3e69 (このIDを非表示/違反報告)
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