片手のないあの子【東リベ】3 (ページ3)

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33-2 タケミチsaid ページ3

「兄貴の周りにはみんな集まってきた」
「東京中の不良たちが、自分より弱い兄貴を慕った」

そんなお兄さんにマイキー君は「なんで男にモテるんだ?」と問いかけたそうだ。
しかし返ってきたのは「まだわかんねぇよ」という言葉だけ。

「東京中の猛者たちを先導する兄貴は」
「いつでもキラッキラに輝いていた」
「あの人が後ろにいるから負けねぇ」
「みんな、きっとそう思ってた」

「マイキー君みたいっスね!」と思った言葉がそのまま口に出た。
しかし、マイキー君は少し顔を俯け、「オレは弱いよ」と聞こえた。

「………え?」

「オマエは強い、タケミっち」

階段を少し上がった所で立ち止まるマイキー君を見上げる。

「本当に大切な事は、喧嘩に勝つ事じゃねぇ」
「自分に負けない事だ」
「オマエは弱ぇのに誰にも屈しない、あの黒龍(ブラックドラゴン)にすら屈しなかった」
「挫けそうな時、オレがオレでなくなりそうな時」
「オレを叱ってくれ、タケミっち」

「兄貴のように」とほほ笑むマイキー君に思わず涙する。
そして、オレは涙をごまかすように叫んだ。

「もちろんです!!」

その後、マイキー君と駄弁りながら、家まで送ってもらった。

「よぉ」

そこにいたのはA君だった。
寒いのが嫌いだとマイキー君から聞いたので、部屋に案内する。

「……ほんとにオマエは真(アイツ)に似てる」

「………え?」

「真一郎…マイキーの兄貴」
「聞いてるだろ?」

「は、はい…」
「(マイキー君と言ってる事同じだ…)」

マイキー君が生まれる前からマイキー君のお兄さんと一緒にいたA君だ。
ほんとに似てるんだろうと思ってしまう。

「マイキーになんか言われたか?」

公園での事をA君に話すと、少し驚いたような表情をした。

「A君…?」

「……俺じゃ役不足だったのかな」

「!」

「万次郎の事を叱るのはいつも真の役目だった」
「俺は…止める事しかできなかった」

A君はどこか悲しそうながらも笑みを浮かべていた。

「居候させてもらってるっていう身もあったし」
「血の繋がりがないから…」
「叱るのは俺の役目じゃないとずっと思ってきた」

「タケミチ」とA君がこちらを見る。

「アイツが道を間違えそうになった時」
「俺が万次郎を止める」
「だから、オマエは万次郎を叱ってくれ」

マイキー君と同じように微笑んだA君。
見えない所で血が滲むほど手を握っていたのをオレは気づかなかった。