片手のないあの子【東リベ】2 (ページ48)

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「聖夜の鐘までオレの勝利を祝福してる!!」
「無敵のマイキー、破れたりぃぃ!!!」

最後の鐘と同じくらいの声量で叫ぶ柴大寿がそこにいた。

「そんな…」
「一発で…!!?」

「大寿、テメェエェ!」
「殺す!!!」

タカが感情に任せたように柴大寿に突っ込んでいく。

「タカ!!」

俺の声にタカがピタリと止まる。

「え…A君…?」

「A…」

タケミチとタカが俺の名を呼び、乾は俺の姿を見て息をのむのがわかった。

「万次郎」

ゆらりと立ち上がる万次郎に柴大寿は振り返った。

「もう止めとけ、佐野万次郎」
「テメェと大寿(ボス)じゃあレベルが違う」
「オマエは大寿(ボス)の覇道に転がってる小石にすぎねぇ」

立ち上がった万次郎は殴られた衝撃が少しフラついていた。

「乾」
「勝手にそう決めつけんな」
「黙って見てろ」

その余裕の顔、今から崩れ去るからと意味を込めてそう告げた。
きっと気づかないだろう。

「今日一番の力でぶん殴ったんだけどな」
「さすがに一発じゃ沈まねぇか」

タケミチやタカもどこか不安そうな表情をしていた。

「無敵のマイキーはこんなモンか!?」
「残念だ」

柴大寿もまた勝利を確信したのか余裕の笑みを向けていた。

「自身への戒めは一発で十分だろ」

「……あぁ」

「あン?」

すると、目の前にいた大寿が消え、ダンッと叩きつける音が教会内に響いた。
万次郎を見れば、髪やマフラーが揺れている。

「…見事」

この場にいる誰もが何が起こったのかわからない様子だった。
倒れて気絶している大寿を見て状況を理解した様にそれぞれが驚く。
身長差が大きい相手にはその場で飛んで、急所をつく。
そして、そのまま床に叩きつけたのだ。

「大寿(ボス)!!!」

「嘘だろ!?」
「あの大寿が瞬殺…」
「これが"無敵のマイキー"!!!」

「兄貴を一発で…」

「すげぇ!!マイキー君」

「バケモンか?」

「………ヒヤヒヤさせやがって」

それぞれの思いを口にしていた。