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「オイ、一虎」


倒れてる一虎の視線が刺さった気がした。


「……逃げんな」


「……え?」


「死にたいってことは罪の意識が出てきた証拠だ」
「死んだら楽になるが、それは罪の意識から逃げるってことだ」


ちらりと一虎を見た。


「俺は、一虎(オマエ)を死なせるつもりはねぇぞ」


そう告げるとマイキーが得意の蹴りが飛んできた。
それを咄嗟に左で受け止めてしまった。


「(あ、やば…)」


受け止めた衝撃に加え、忘れていた痛みと固まり切れなかった血が飛んだ。


「は?」


「え、A君、その傷…」


「A…それ…どこで…」


止まっていた血が流れており、腕を伝って地面に落ちる。


「……またなのか(・・・・・)?」


マイキー…万次郎の問いかけに俺は何も答えない。
万次郎と膠着状態が続いた時だった。


「マイキィィ!!」


場地の叫びとともに血を吐く声も聞こえた。
それにマイキーがバッと場地を見て、ゆっくりと足を降ろす。


「オレの為に…怒ってくれて…ありがとな」


場地はヨロヨロと山積みの廃車からゆっくりと降りるが、場地が歩いた道には決して少なくない量の血が地面を染めていた。


「オレは、死なねーよ」
「こんな傷じゃあ、オレは死なねー!!!」


庇えたとは言え、決して傷は軽くないと感じていた。


「気にすんなよ、一虎」


場地は最後まで一虎の身を案じていた。


「(ほんとに場地(オマエ)は――…)」


そんな場地の手には折り畳み式のナイフが握られていた。


「オレは…」


場地はナイフ(それ)を両手で握り、思いっきり振り上げて、そのまま自身の腹に刺した。


「(オマエの覚悟、それがオマエの強さだ…)」


誰もが自分で腹を刺した場地を見つめる中、頬に何か伝った気がした。


「場地さぁん!!!」


千冬が倒れた場地に駆け寄り、頭を抱きかかえる。


「場地さんっ」
「なんで…っ!?」


すると一虎はフラフラと立ち上がり、俺の肩に手を置いた。
その後、俺より前に出て万次郎を見つめる。


「……マイキー」
「次はテメーだ」
「仲良く逝かせてやるよ」


ちらりと見えた一虎の目からは涙が流れていた。


「黙れ」
「殴り殺してやる」


そして、二人はお互いに何をする事もなかった。

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作者名:倖那 | 作成日時:2021年9月25日 17時

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