片手のないあの子【東リベ】2 (ページ14)

今日:4 hit、昨日:21 hit、合計:56,377 hit

21-1 ページ14

遠目で見る奴…稀咲は苛立ちを隠せない様子で、場地がまだ来ないと踏んでか副隊長と話していた。

「(場地のこと舐めすぎ…)」

そう思った矢先に場地は副隊長をぶっ飛ばし、鉄パイプの尖った先を稀咲の喉仏に向けた。

「チェックメイトだ、稀咲ぃ」

参番隊の連中は稀咲以外場地によってノされていた。

「やれるもんなら、やってみろ!」

稀咲もまた覚悟を決めて場地を睨む。
しかし、いつまでも場地が動くことはなかった。

「限界か…」

「え……?」

小さく呟いた言葉は横にいたタケミチに拾われた。

「限界ってどういう…」

言い切る前にタケミチは再び場地を見る。

「場地君?」

場地はゴホっと口から血を吐き、「ここまでか」と呟き、膝から崩れた。
廃車にたたきつけられる寸前で俺は場地を支え、ゆっくりと降ろした。
「場地さん!!」と千冬が駆け上がってきた。

「稀咲、テメー何をしたぁ!!」

「ちげーよ、千冬」
「稀咲(そいつ)は何もしてねぇ」

「Aさん…」

「Aさんの言う通りだ、オマエも見てたろ?」
「オレは、何もしてねぇ」

千冬は倒れた場地の様子を見て、腹部から血が流れていた。

「刺されたんスか!?」
「いつ…!?」

その言葉がタケミチに届いたようで驚いていた。
そして千冬はある人物を睨みつけ、その名を叫んだ。

「一虎ぁぁ!!!」

名前を呼ばれた当の本人は虚空を見つめ、ﾌﾞﾂﾌﾞﾂと何かを呟いていた。

「…………」

そんな様子の一虎に目を伏せた。
稀咲が何か言っていた。
大方、マイキーを煽る為だと察しがついた。
起き上がったマイキーはゆっくりと降りてくる。

「殺したかった…ずっと…」
「一虎(テメー)が年少から出てきたら、真っ先にオレが殺そうと思ってた」
「そんなオレを諭し続けてくれたのが、場地だった」

一歩一歩ゆっくりと降りるマイキーの姿に頭を抱えた。

「場地が言ってた、"一虎は、マイキーを喜ばせたかった"」
「"だから、あいつは受け入れられない"」
「"たとえ、マイキーの兄貴を殺しちまっても"」
「"たとえ、Aの右腕を失くしちまっても"」
「"自分を肯定する為にマイキーを敵にするしかなかった…"ってよー」

頭から伝う血をペロっと舐めるマイキーの表情は"無"だった。

「(キレてんな…)」
「(今のアイツの前に出たところで、血濡れた手(コレ)見られてもさらに煽るだけ…)」
「はぁ…めんどくせぇよ」