【歌い手】私の全てを受け入れて。ver.A【大型コラボ】 (ページ14)

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昨日逃げ出すように病室を飛び出したため忘れたゲーム機を取り返すべく昨日ぶりの病室の扉を開ける。

『昨日のゲーム機…』

「うぎゃぁああっ！ノック無しで乙女の部屋に入るなんて最低や！」

『ノックなら昨日もせんかったしなんならお前女やないやろ』

「こんな美女を男なんて言うって…志麻まさかアホやない？」

今日病室に入ると奇声をあげた女の皮を被ったゴリラがわたわたと慌ただしくテーブルに置かれた物を片付け始めた。

片付けが終わったのだろう、頬を膨らませた幼馴染が「どーぞ」と無愛想に言った。

『昨日のゲーム機返してくれへん？』

「あぁ、ほいどーぞ」

『…なんか落書き描いてあるんやけど』

渡された白いゲーム機の表面には黒い油性ペンで何やら落書きをされていた。

「ふっふーん、気づきました？これはね、志麻が超有名な歌手になった時に書くサインを考えてみたで！」

『筆記体で志麻って書いただけやん』

でかでかと俺の名前しか主張していないゲーム機を静かに見つめて鞄にしまった。

『…進路希望は』

「そんなんA様がとーっくに書いて差し上げましたけど？」

そう得意げに言って俺に紙を渡してくれる。

『…あのな、進路希望は行きたい大学とか書くものであって、なりたいものを書く紙やないんやで？』

「ええやん別に」

『ええわけあるか！
①誰かのお嫁さん、
②有名な歌手に志麻がなれますように、
③優しいおばあちゃん…ってアホか！』

「夢が詰まっててええやん！」

『②に関しちゃお前のことやなくて俺のことやし！』

俺ははぁとため息を吐き、先生に怒られること間違いない紙を鞄にしまって病院を出て帰路に着く。

携帯に着信があり、開くとあの馬鹿からだった。

[やっば進路希望ちょっと変えるわ！メールに書いてある通りに書き直してくれへん？]

下にスクロールしていくと驚きを通り越して呆れが湧き上がってきた。

ついでに口から低い声が自然と出た。

『……は？』