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「虹羽くん！ちょっと待っ……うわあぁっ！？」
止める間もなく、虹羽くんが怪しげなスイッチを押してしまった。と思った次の瞬間、ふわりと体が浮いた感覚がして、そして瞬時に悟った。
「(お、落ちてる！？)」
すぐ側にはこの事態の巻き添いになってしまったらしい享くんが瞠目していた。勿論、俺同様に落ちながら。
大変だ！このままだと……っ！
「……っ享くんッッ！！」
風圧なのか、声が少し掻き消えた気がした。なりふり構ってられない、この子だけでも守らないと──！
俺は享くんの小さな身体に手を伸ばした。そこから先の記憶は──正直、ない。
どこまで落ちたのか、どれほどの時間落ち続けていたのか。それは分からない。気が付いたとき、俺は平然と息をしていて、ぱちりとこの両目を開けたんだ。
ぼやぼやとした視界に、享くんの顔が見える。俺の顔を覗き込んでるみたいだ。
間も無く視界が整ってきて、上体を起こそうとした。
「享くっ……！？」
刹那、背中に鋭い痛みが走った。針で刺されたような、いや、それどころかナイフのような。
同時に記憶が蘇ってくる。どうやら背中を打撲したらしい。
何とか享くんを抱き抱える体勢になって、その直後に頭と背中に鈍い痛みを感じて……それで、気絶していたのだろうか。
「桐山、さん……大、丈夫、ですか」
「いてて……うん、何とか命拾いはしたみたいだ。享くんは？大丈夫？」
何とか身を起こしそう聞くと、彼はこくりと頷いた。よかった。ほっと安堵の息を吐く。
「そっか、それは良かった……」
「桐山さんの、お陰で……」
享くんは一度言葉を切り、俺の顔を見つめながらまた続けた。
「あの、何故、ボクを庇ってくれたんですか……？」
無機質な藍色の瞳が真っ直ぐに俺の目を捉えた。思わず、吸い込まれそうだなんて思ってしまったくらいに。
「それは……身体が動いて……」
いや、違うな。言っていて、自分でそう思った。何故、か。なんでだろう。
いや、そんなの考えるまでもないか。そう結論付けて、俺は改めて藍色を見つめ返す。
「助けたかったからだよ。君のことを」
そう言うと、享くんはまた不思議そうに首を傾げる。そして一拍置いて「そうなん、ですね」と口を開いた。
「ありがとう……ございます」
「ううん、俺がやりたくてしたことだから……あ、そうだ。みんなとはぐれちゃったから、早く合流しなきゃね」
まだ頭はわずかにズキズキするし、派手に打ちつけた身体も痛いけど……そうは言ってられない。
「行こうか、享くん」
「……はい、桐山さん」
享くんはまた、静かに頷いた。
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