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「じゃあ、そろそろまた行こうか?」
しばらく雑談をしていたら、不意に聡迷くんが問いかけてきた。ボクはゆずと顔を見合わせ、彼に向かって頷く。
本当は不本意なんだけど……でも、そんなこと言ってらんないよね……。
ボクらの反応を確認して、「そろそろ、誰かと合流出来ればいいんだけど」と言いながら聡迷くんが立ち上がった。それに続くようにして、ボクも重い腰を上げた。
「それにしても災難だったんだねぇ〜……まさか、二人揃ってトラップの穴に落っこちちゃうなんて」
「あ、あはは……トラップ……だったのかな。分からないけど、確かに運が悪かったよ。特に享くんを巻き込んでしまったのは、まだ心苦しい思いがあるかな……」
申し訳なさそうに笑って、聡迷くんは享くんを見やった。対する享くんは聡迷くんを見つめ返し、首を傾げた。
「ボク、ですか?」
「うん。俺はちょうど開閉口の上にいたから仕方ないけど、あの時、もっと俺がしっかりしてれば、せめて享くんは助けられたんじゃないかって思って」
後半のセリフにつれて、聡迷くんはだんだんと表情を曇らせ俯いた。ゆずが慌ててフォローに入る。
「で、でもまあ、こうして無事に私達は合流できたことですし!何より、怪我がないみたいで良かっ……」
と、ゆずが最後の最後で言葉に詰まった。視線は聡迷くんの顔に注がれている。
「どうかしたの?」と聡迷くんが訊ねると、「い、いや、」とゆずは何かを否定して言いにくそうに言葉を続ける。
「その……聞いていいものか……っあの、その顔の怪我は、落ちた時のものですか?」
聞かれて、聡迷くんはほんの一瞬黙った。でも、また誤魔化すかのようににっこりと微笑む。
「えーとね、これは元からなんだ。ちょっと前に、顔から派手に転んじゃってさ……落ちた時は本当に怪我してないから、大丈夫だよ」
「ホントに〜?」
何か隠してるような気がしてならないんだよね。だって、顔から転んでそんな風に怪我する?でも、聡迷くんは「本当だって」と困り笑いを浮かべた。
それに対し、ゆずは渋々受け入れたかのように頷き、享くんに目を向けた。
「享くんは?大丈夫?無理してない?」
念のため、と言った感じかな。二人とも、痛がってる素振りはさっきからなかったから。案の定、享くんはこくりと頷いた。
「ボクも、怪我はありません」
「うん、ならよかったじゃん!ね、ゆず」
「うん、そうだね」
ボクとゆずが顔を見合わせたとき、享くんが「あの」とまた声を上げる。そしてこう続けたんだ。
「聡迷さん、が、庇ってくれました、から……」
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