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「貴女一人の一方的な考えで私達を閉じ込めるって言うの?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。ねえ、他のみんなはどう?ほら、ゆんなちゃんは?」
急に話を振られて、「えっ」と固まってしまう。ずっと夢の中にいることについて、どう思うか?それは……。
不意に、お父さんとお母さんの顔が、声が、脳裏をよぎった。二人がよく言ってた言葉。そう、電話をしてる、二人の顔。
『お父さんには内緒にしてね』『母さんには内緒だぞ』
……うそ、ついてばっかり。
「……っ別に……嫌じゃ、ないよ。カスミちゃんのこと、好きだし」
二人のことを考えてたら、何だか自然と帰る気がなくなっていた。みんながわたしの方へ視線を向ける。
「えーーー!?マジで言ってんの、きみ!!」
みらくんが大きな声で言った。ちょっとうるさい……。
「か、かえでも」
ちょっと慌てた様子でというか、必死な様子で、というか。さっきカスミちゃんに問いかけていた白い髪の女の子……かえでちゃん?が、恐る恐るといった様子で、でもゆるやかに速度を上げてカスミちゃんに駆け寄って言った。
「かえでもっ、……かえでだって、カスミちゃんとずっと一緒にいるよ……!」
告げるかえでちゃんに「ありがとう」とカスミちゃんが微笑んだ。するとたちまちかえでちゃんも笑顔になる。
「ね、織慧ちゃん。みんなもきっと、納得してくれてるのよ」
「そんなわけないでしょう。仮にここにいる全員が状況を受け入れたとしても、私は絶対に受け入れないわよ」
わたしやかえでちゃんの発言を聞いても全く揺るがない様子でおりえさんが言う。すると、……あれ?気のせいかな……。カスミちゃんが目を伏せた一瞬、いつも浮かべているはずのあの笑顔が失せた気がした。思わず小さく肩を揺らしてしまう。でも、誰も気がついてないのか、気にしていないみたい。やっぱり、見間違いかも。
カスミちゃんはさっきまでと変わらない笑顔でおりえさんを見上げた。
「もう、織慧ちゃんったらしょうがないわね。わかったわ、どうしても帰りたいなら、玄関からどうぞ」
「玄関があるの?夢の中に?」
「そうね……断言はしないわ。聡迷くん。あると思うなら探してみればいい、ってことよ」
そうめいくん、と呼ばれたせいの高い男の子が続けて聞いた。
「……何で言い切らないのかな?」
「下手に希望を持たせない為でしょう。全く、貴女も嫌な子ね」
不快感を隠そうとせずに言うおりえさんに、カスミちゃんは言い返すこともなく大人びた笑みを浮かべるだけだった。
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