一生に一度の恋５ (ページ24)

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パッと目を開けると、
さっきと景色は変わっていなかったが
隣の安田さんは携帯を触っていた。

…ん？今…寝てた！？

あり得ない事実に勢い良く起き上がると、
安田さんもびっくりした顔で私を見た。

「あっ、おはようさん(笑)」

『…私、今寝てました…？』

「んー、２０分くらいやろか？
ぐっすり可愛ぇ顔で寝てたで(笑)」

にっこりと仏の様な優しい顔を見せる。

…やってしまった。まさか。
せっかくお金払って頂いてるのに
なんて事をしちゃったんだ…

急激に申し訳無い気持ちが押し寄せ、
素っ裸なのも気にせず
ベッドの上で土下座をした。

『っ、本当にごめんなさい！
せっかくの時間なのに…』

「何してるん！？明奈ちゃん止めてや！
女の子がそんなんしたらアカン！

可愛ぇ寝顔見れたし僕、満足やねんで？(笑)

…ほら、おいで。」

そう可愛らしく言う安田さんは
口調とは真逆の力の強さで
私を自分の胸に引き寄せてまた寝転んだ。

「今日ぐらいゆっくりしよーや。
明奈ちゃん、頑張り過ぎやわ。」

『えぇ…別に頑張ってなんか無いですよ…
でも、まだ時間もあるし…』

「僕がええんやから、気にせんでええの。

…てか、これ見て！ヤバない？
教科書でしか見た事無かってん！」

私の言葉をやんわり遮り、
安田さんは海外で撮った携帯の写真を
見せてくれた。
楽しくお喋りはしていたものの、
私には申し訳無さが残った。

付き合いの長い安田さんだったから
良かったものの、
普通だったらクレームに当たる行為だ。

…本当、しっかりしなきゃ。

ホテルを出て
安田さんからのお土産を受け取り、
帰っていく後ろ姿に小さく手を振って見送った。

…安田さんは優しくて懐の深い人だ。
客の前で寝てしまうという失態を
犯したにも関わらず、何も責める事無く、
むしろ逆に私を労ってくれた。

私はお客さんに恵まれている。
だからこそ、その親切心に傲る事無く
それ以上の接客をしなければ…と
気持ちを引き締めて店へ戻った。

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