一生に一度の恋５ (ページ21)

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「木曜日やったかなぁ…
１週間くらい休ませて欲しいって
カズから連絡来てん。
周年祭も控えとるし１週間はなぁ…って
言うたんやけど、
それまでには帰ってくるし、
客の事もしっかり管理しとくんで、って。

今まで無断欠勤も遅刻もせーへん奴やから
何かあったんかな？って地味に
心配はしてんねんけど…」

私は裕くんの言葉を聞いて記憶を辿る。

木曜日…
その日はカズにご飯作ってあげた日だ。
そして、喧嘩をした日でもある。
でも仕事は真面目なカズが
私とのいざこざで１週間も休むの？

……でも「帰ってくる」って言ったなら、
何処かに行かなきゃいけない事があるって意味？

裕くんが心配そうな顔で見る。

「あいつ、Aに
言うてなかったって事やんな？」

『うん…。むしろ今、無視されてる…』

「はぁ！？…どうしたん、お前ら？
何かあったんか？」

『…ちょっと喧嘩しちゃって。
今まで喧嘩した事無かったんだけど、
連絡取れなくなるのも初めてで…

カズ…本当、何処居るんだろう…』

少し沈黙になった後、
何かを確信めいた顔で裕くんが質問してきた。

「……ちゅーか、お前ら本当は
彼氏、彼女じゃ無いんやろ？」

裕くんの言葉に思わず顔を上げる。

カズは店では一応
お客さん扱いをしてくれていた。
でも他の従業員に私の事を
どう伝えていたのかは知らないし、
もし、隠していたのであれば
話を合わせなくてはならない。

…何て答えよう、と
考えている間に裕くんが話し始めた。

「前にな？カズ本人から言われてん。
本当はAとは腹違いの兄妹やって。
多分…その事は俺にしか
言うてなかったみたいやから
俺もずっと黙っとった。」

『裕くん、知ってたんだ…。
カズの言う通り、私達兄妹だよ。

…だからこそ、連絡取れないのが怖いの…』

あんだけ嫌だった「独りぼっち」の感覚が蘇り、
涙が出そうになった。

「…A、お前大丈夫か？
カズ帰ってきたら、すぐ連絡したるわ。
やから、とりあえず今日は帰り？」

そう優しい声で心配する裕くんに頷き、
連絡先を交換した。

どうやら口座※以外と連絡取る事は
ホスト業界ではご法度らしく、
この緊急事態やからしゃーないけど
カズ以外には言うたらアカンで。と釘を刺され
裕くんに見送られつつ、真っ直ぐ家へ帰った。

※口座＝指名しているホスト
東京では担当、関西では口座と呼ぶ