あの子になりたい ページ30
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どれだけ背伸びをしても、手を伸ばしても到底届きはしないような、身の丈に合わない恋をした。
適わない想い、叶わない恋、敵わない人。
かなわないのだ、私の恋は。
それでも、ああそうですかとは終われないのだ。
「…初めてこんなに人を好きになりました。部活を頑張ってるところも、よく見てて──」
「…」
どうしてくれよう、この状況。
目の前で繰り広げられている光景に咄嗟に物陰に隠れた美和は、内心鬱々たる溜息をこぼした。
頬を染める女子生徒と、向き合う男子生徒。簡潔に説明しよう、告白現場だ。
いつも通り部活に向かおうとしたところ、見ず知らずの女子の一世一代の勝負に鉢合わせてしまった。
何せこの学校で水泳場まで行ける道のりは靴箱から生活館を通るこの道しかないので、回り道ができない。
決死の思いを伝える女子に対して怒りは無いが、なにもここじゃなくてもよかっただろうとは思う。
告白なんて屋上か校舎裏が相場だろ。
しかし流石にこの状況で「ちょっと通ります。すみませんね」と水を刺せるほど私はイカれていない。
つまり私はこの告白が終わるまで、水泳場に辿り着けない。
「(…最悪だ)」
チラチラと聞こえてくる女子の緊張した声色に、盗み聞きしてる罪悪感が湧いてくる。
「(…とはいえわざわざ終わるまでどこかで時間を潰すのもなぁ)」
罪悪感を感じながらも物陰から少しだけ視線を向けると、見えた黒髪にドキリと心臓が鳴った。
いや、分かっていた。何となくこの人なんだろうなとは思っていたけれど、どうも私はこの男に敏感になってしまうらしい。
「だから、私…流川君のことが好きです。あの、もしよかったら──…」
女子生徒の震える声に、自分のことじゃないのにドキドキと次の言葉を待つ。
告白をしている女子は明るい色の髪を垂らして、一瞬見ただけでも整った容姿をした雰囲気も可愛らしい子だった。
きっとクラスでも一二を争うくらいの女子。こんな子に好きだと言われれば、どんな男だって嬉しい筈だ。
しかしこの男の言葉は、嬉しいなんて気持ちとは似ても似つかないものだった。
「興味ない。わりーけど、他当たれ」
「ッ…あ、そう…だよね」
「……」
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Uo(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます❕お褒めの言葉本当に嬉しいです😖ご期待に応えられるよう頑張ります!! (7月29日 20時) (レス) id: a616e905ad (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 絵うますぎませんか? え、うま ビビるほど上手い 尊敬します!! お話もとっても面白いです!応援してます! (6月22日 14時) (レス) @page5 id: c33439ae2b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» ありがとうございます❕たくさんのご感想に、私も日々活力を頂いています!!気長にお付き合い頂けると幸いです…!! (5月29日 2時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
生粋のまよらー(プロフ) - メープル3続編おめでとうございます!!これからも主様の投稿を心待ちに日々過ごして参ります!!!続編でもコメントします! (5月28日 20時) (レス) @page49 id: 3e4069aada (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» コメント、ありがとうございます❕仙道はのらりくらりという感じで掴みづらいキャラなので上手く表現できるか不安ですが、精一杯頑張ります!!温かいコメント、いつも本当にありがとうございます。とても嬉しいです😖 (5月28日 0時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Uo | 作成日時:2023年4月23日 1時