157話 ページ7
Aのことを世界で一番幸せにする約束は、例えAがセドリックを好きになっても、果たすことができるはずだ。
「Aに愛されるのが僕じゃなくても、僕は彼女を愛し続ける。それでいい」
セドリックは一瞬心底驚いたような顔をして、でもすぐに小さく笑った。
「なら、やっぱり君の勝ちだ。Aのことが本当に大好きな君が──それでも僕に優勝杯を取れと言うなら………さあ、行くんだ」
ありったけの意思を最後の一滴まで振り絞ったような言葉だった。
断固とした表情で、腕組みをして、決心は揺るがない──そう言っているようだった。
ハリーはセドリックを見て、優勝杯に視線を移した。
一瞬──本当に一瞬、ハリーは優勝杯を持って迷路から出る自分を思い浮かべた。
高々と優勝杯を掲げ、観衆の歓声が聞こえ──Aの顔が賞賛に輝く。
それでもすぐに、その光景を振り払った。
そしてまた、目の前で頑なな顔をしているセドリックを見る。
そもそも、セドリックがAに伝えたいことを、僕が止めることなんてできない。そんな権利はどこにもない。
それなのにこれでセドリックが負けで僕が勝ち──?そんなおかしな話は無いだろう。
僕がここで一人で優勝杯を取ったとして、皆に──彼女に、Aに笑顔を向けられるなんて──。
「二人ともだ」
「えっ?」
「二人で一緒に取ろう。ホグワーツの優勝に変わりない。二人で引き分けだ」
耳を疑うような顔をしたセドリックが、嘘だろ?とばかりに組んでいた腕を解いた。
「君──君、それでいいのか?」
「ああ……僕たち、助け合ったよね?二人ともここに辿り着いた。一緒に取ろう」
その言葉にセドリックはニッコリと笑うと、生垣で支えていたハリーと肩を抱くように抱えた。
「話しは決まった──さあ、ここへ」
優勝杯の乗った台まで脚を引きずって行くハリーを支えて、辿り着くと、優勝杯の取っ手にそれぞれ片手を伸ばす。
「三つ数えて、いいね?」
「いち──に──さん──」
ハリーとセドリックが同時に取っ手を掴んだ。
途端、身体がグイッと引っ張られる感覚がして、両足が地面を離れた。
優勝杯から手が離れない──……
風が唸る───渦の中を、優勝杯がハリーを引っ張って行く───……
────セドリックと一緒に。
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黒猫_Kurone - 2人の仲がいいことがわかるイラストでめちゃ好き…。番外編も面白くて、わくわくしながら読んでます!作者さん、素敵な作品とイラストを提供していただきありがとうございます!! (6月17日 15時) (レス) @page37 id: 02580b15cb (このIDを非表示/違反報告)
黒猫_Kurone - ダンスパーティーで、フレッドの活躍や、主人公ちゃんがハリーの目の色に合わせて、ドレスを選んだというシーンとかめちゃ好きです!閑話のハリーと主人公ちゃんのイラストで、ハリーかっこよすぎて惚れるし、主人公ちゃん、天使…めちゃかわいい…(チーン (6月17日 13時) (レス) @page37 id: 02580b15cb (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - ダイアナさん» コメントありがとうございます❕セドリックの最期は本当に切ないですよね😖 (6月5日 0時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
ダイアナ(プロフ) - セドリックウウウウウウウ (2023年3月3日 6時) (レス) @page30 id: 43545663d6 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - みのみのさん» コメントありがとうございます❕私も、この炎のゴブレットがハリー・ポッター作品の分岐点のようなお話だと思っているので、とても嬉しいです!!イラストを公開するのが何気に一番緊張するので、ドンピシャと言っていただけると本当に安心します😖 (2022年9月19日 21時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月15日 17時