検索窓
今日:13 hit、昨日:22 hit、合計:63,313 hit

157話 ページ7

Aのことを世界で一番幸せにする約束は、例えAがセドリックを好きになっても、果たすことができるはずだ。








「Aに愛されるのが僕じゃなくても、僕は彼女を愛し続ける。それでいい」









セドリックは一瞬心底驚いたような顔をして、でもすぐに小さく笑った。










「なら、やっぱり君の勝ちだ。Aのことが本当に大好きな君が──それでも僕に優勝杯を取れと言うなら………さあ、行くんだ」













ありったけの意思を最後の一滴まで振り絞ったような言葉だった。






断固とした表情で、腕組みをして、決心は揺るがない──そう言っているようだった。







ハリーはセドリックを見て、優勝杯に視線を移した。










一瞬──本当に一瞬、ハリーは優勝杯を持って迷路から出る自分を思い浮かべた。










高々と優勝杯を掲げ、観衆の歓声が聞こえ──Aの顔が賞賛に輝く。







それでもすぐに、その光景を振り払った。








そしてまた、目の前で頑なな顔をしているセドリックを見る。








そもそも、セドリックがAに伝えたいことを、僕が止めることなんてできない。そんな権利はどこにもない。







それなのにこれでセドリックが負けで僕が勝ち──?そんなおかしな話は無いだろう。






僕がここで一人で優勝杯を取ったとして、皆に──彼女に、Aに笑顔を向けられるなんて──。













「二人ともだ」




「えっ?」




「二人で一緒に取ろう。ホグワーツの優勝に変わりない。二人で引き分けだ」










耳を疑うような顔をしたセドリックが、嘘だろ?とばかりに組んでいた腕を解いた。












「君──君、それでいいのか?」





「ああ……僕たち、助け合ったよね?二人ともここに辿り着いた。一緒に取ろう」











その言葉にセドリックはニッコリと笑うと、生垣で支えていたハリーと肩を抱くように抱えた。














「話しは決まった──さあ、ここへ」












優勝杯の乗った台まで脚を引きずって行くハリーを支えて、辿り着くと、優勝杯の取っ手にそれぞれ片手を伸ばす。











「三つ数えて、いいね?」













「いち──に──さん──」












ハリーとセドリックが同時に取っ手を掴んだ。








途端、身体がグイッと引っ張られる感覚がして、両足が地面を離れた。











優勝杯から手が離れない──……











風が唸る───渦の中を、優勝杯がハリーを引っ張って行く───……












────セドリックと一緒に。
















✳︎

158話→←156話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (173 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
184人がお気に入り
設定タグ:ハリー・ポッター , 原作沿い , ハリポタ   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

黒猫_Kurone - 2人の仲がいいことがわかるイラストでめちゃ好き…。番外編も面白くて、わくわくしながら読んでます!作者さん、素敵な作品とイラストを提供していただきありがとうございます!! (6月17日 15時) (レス) @page37 id: 02580b15cb (このIDを非表示/違反報告)
黒猫_Kurone - ダンスパーティーで、フレッドの活躍や、主人公ちゃんがハリーの目の色に合わせて、ドレスを選んだというシーンとかめちゃ好きです!閑話のハリーと主人公ちゃんのイラストで、ハリーかっこよすぎて惚れるし、主人公ちゃん、天使…めちゃかわいい…(チーン (6月17日 13時) (レス) @page37 id: 02580b15cb (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - ダイアナさん» コメントありがとうございます❕セドリックの最期は本当に切ないですよね😖 (6月5日 0時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
ダイアナ(プロフ) - セドリックウウウウウウウ (2023年3月3日 6時) (レス) @page30 id: 43545663d6 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - みのみのさん» コメントありがとうございます❕私も、この炎のゴブレットがハリー・ポッター作品の分岐点のようなお話だと思っているので、とても嬉しいです!!イラストを公開するのが何気に一番緊張するので、ドンピシャと言っていただけると本当に安心します😖 (2022年9月19日 21時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:とま | 作成日時:2022年9月15日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。