赤葦さん家は今日もほのぼの。その2

12*チョコの行方* ページ12

我が家のバレンタインはお父さんが張り切る。
まぁ、ホアカに出すデザートを考えるからなんだけど。
毎年バレンタインは家族でチョコを作る。
弟の海成は「女子から手作りもらうけど、自分で作ったチョコが一番うまいんだよね」と言う。いやな男だ。

今年もつくった。
今年は紗英の分と自分の分、部員にも小さいのをつくった。ラッピングも上々。可愛いだろう。

「姉ちゃん、今年は誰にあげるの？」

「副キャプテンと部員と自分に」

「ふーん」

「何よ」

「別に」

にやにやしながら去っていった。
私の手元には小さいチョコ13こと箱に入ったチョコが2つ。私が食べるスペシャルチョコ。

小さいのは部員に。
箱に入ったチョコ1つは紗英に。
もう1つは。

もう1つも。

たぶん、私が食べる。


バレンタイン当日は学校内の空気がいつもよら明るかった。まぁ、嘆く男子もいたけど。
そんなチョコくらいで上がったり落ちたり大変だな。

私は紗英とチョコ交換。友チョコなんて久しぶりだなぁ。部活が始まる前に部室で部員にも配った。これは初めて。
クロさんは部員たちからいくつかチョコをもらっていた。「いいって言ったのにサンキュー」とか言ってたけど、あんなのふりだろーよ。

紗英に居残りしようと誘ったが彼氏と待ち合わせらしい。女子だなぁ。女子だよ、さえちん。
部員の何人かもデートらしく、うきうきと帰っていった。結局、一人かよ！

「今日もお熱いことで」

「は？」

クロさんが意味のわからないことを言ってきたので、思わず悪態をついてしまった。

「だって、おまえの彼氏はバレーボールじゃん。超ぞっこん」

「なぜバレーボールの性別が男子か」

「まぁまぁ」

クロさんはレシーブの練習に付き合ってくれた。見本を見せてもらうといつも悔しくなる。しなやかで、きれいなレシーブ。



ネットを片付け終わると、もらったチョコを「いいだろー」と見せつけてきた。「はいはい」とあしらった。
なんだかムカついて、小さいチョコをクロさんの頭めがけて投げつけた。見事ヒット。

「いってーな！」

「お つ か れ さ ま で し た ！」


カバンには箱に入ったチョコがあった。


でも、家に帰って私が食べた。

* * *

2017・10・22

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