13:おそったおうじ ページ48
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「何言ってんのAちゃん、あの人たちAちゃんのこと探してるんだよ?」
「……好都合なのは分かってる。だけど、やっぱり見てるだけじゃダメな気がする。」
「でも、Aちゃん。」
「…ん?」
不安そうな顔でまふくんが、私を見る。
「あそこには男がうじゃうじゃ居るんだってば! そんな所にAちゃんを行かせるなんて、浮気しろって言ってるようなもんじゃん!」
「いや今その心配!? しんみりとした話をしてたんでしょ?」
そうだ。まふくんはこういう人だった。
「じゃあAちゃん約束して! 他の男には触らないこと。」
「…………あぁ、うん、わかったからわかったから!」
「…本当に行くの?」
「行くよ。」
「……あの人たちはいい人達だけど、もしかしたらAちゃんに向かって失礼なことを言うかもしれない。……Aちゃんが傷ついたところなんて見たくないよ、僕。」
「……まふくん、」
まふくんはいい人だ。
私のことを心配してくれてる。
だけど傷つきたくないなんて、それだけの理由でまふくんだけに頼るなんてそんなのは嫌だ。
「でもこれは私の問題だし、自分で解決したい。ダメかな?」
「………僕も一緒に、」
「ううん。自分で解決しなきゃ。まふくんにはいつも守ってもらってばっかりだからね。」
まふくんの心配そうな眼差しを見て見ぬふり。
これが正解だと思うから。
「それにしてまふくん、私たちって変な関係だよね。守ったり守られたり。彼氏彼女じゃないのに。ふたりでいつも一緒で。へへへ」
「……っ、Aちゃん。」
「ん?」
まふくんは、苦しそうな顔をしたあと
俯いて私に近づいてもう一度座る。
「まふくん、私もう行かなきゃ」
そう言って立ち上がろうとしたとき、まふくんの長い前髪から見える鋭い眼差しを見た。
私は次の瞬間、視界が揺らいで
気づいた時にはもう、まふくんに組み敷かれるような形になっていた。
まふくんの顔だけが映った私の瞳。
「もう、いいよね?」
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山下(プロフ) - ゆんたさんの作品が大好きで一文字でも多くゆんたさんの書く文章が読みたいです。もし宜しいのであれば続編を読みたいです。 (3月31日 3時) (レス) id: 12bd432e17 (このIDを非表示/違反報告)
めぞぴあの(プロフ) - 続編、読みたいです… (8月30日 19時) (レス) id: 269b094ab0 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 続編読みたいです!!!!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月25日 9時) (レス) id: 0407d7412e (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - コメント失礼致します。この作品、好みドンピシャです…!ここまで刺さる作品今まで読んだことがなかったので読んでいてとても楽しかったです! (2022年12月31日 17時) (レス) id: cb0bd95209 (このIDを非表示/違反報告)
まちゃん(プロフ) - コメント失礼します。最高の作品でした。今はパスワードがあって見られませんが、いつか全体公開にしてくださる日を待ってます!!!いつか続編見たいです! (2022年10月31日 23時) (レス) id: 3a7614e975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆんた | 作成日時:2018年6月19日 19時