【名探偵コナン】僕があいした、ただひとりの君へ２【諸伏景光】

番外：Sherry＆Carol ページ29

私が組織の指示に従う理由は、姉の為、その一言に尽きる。






少し前、姉は諸星大という一人の男を組織へと連れてきた。

男のくせに艶やかな長髪、日本で見るのは珍しいグリーンアイ、身に纏う何処か冷たいオーラ。


正直言って、気に入らなかった。こんな男の何処が良いのか。


けれど、大好きな姉が幸せそうに彼の事を話すから、まぁ、当人達が良いなら、と受け入れたつもりになっていた時。


ふと、彼と妙に距離が近い、彼女の事が目に留まった。


半年程前だったか、キャロルというコードネームを耳にするようになったのは。


所謂ハニートラップ要員としてその名を与えられた彼女の本名は知らなかったけれど、目を引くような容姿は、初めて見たあの時から忘れていない。


ベルモットとはまた違う、凛としたオーラを纏う彼女。その中にしかりと存在する妖艶さは、同性の私から見ても美しかった。


けれど、彼女は基本的には一匹狼のような存在で、組織の命には従順だけれど、特定の誰かと親しくしている所は見た事が無かった。


なのに、まだ入りたての、コードネームすら与えられていない彼との接点が、何処にあると言うのか。


姉は何も言わなかったけれど、私としては、もしそこに姉が悲しむ要素があるのなら排除したくて。




偶然、研究室から近いラウンジの自販機でコーヒーを買う彼女が視界に入った時には、思わず早足で近寄り、その袖を掴んでいた。



「...話が、あるのだけれど」
『！...いいわよ、貴方もコーヒーでいいかしら？』


奢られる程親しくない、とストレートに言ったものの、こういうのは素直に受け取るものよ、と頭に手を置かれて、思わず従ってしまう。



ーーーその手が、思ったよりも優しかったから。

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