【名探偵コナン】僕があいした、ただひとりの君へ２【諸伏景光】

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『...ターゲットを連れ込む部屋って、ココ？』
「え？あぁ、そうだな、この部屋だ」


ふぅん、と呟いて、彼の前にしゃがみこむと、その膝に手を添える。


どきり、と心臓が跳ねる音を聞いたのは、彼だけだったのか、否か。



『...じゃあ、私自分のアパートで待ってるから』
「...うん？」
『ちゃっちゃと終わらせて、来て』
「...え、」


それは、どういう意味なんだ、と確かめたいのに、彼女の視線がそうさせない。



『...頑張って、ちゃぁんと良い子で出来たらご褒美あげるわ』
「っ、え、は！？」
『...貴方の好きなお酒を買って、貴方が美味しいって言ってくれたおつまみも作って、待ってる』


ふわり、と綺麗に目が細められ、口角がゆるりと上がったのは一瞬。


切り替えたようにすくっ、と立ち上がった彼女は、じゃあ後は準備して出来るわよね？と言うと、綺麗な発音でGood Luck！と続けた。


確かに、急な呼び出しだったから今夜泊まる宿探しはこれからだ。


けれど交通手段が残っているうちに、ニューヨークの彼女のアパートへと向かうには、最短時間で任務を終わらせないと厳しい気がする。


まさか、と1つの仮説が過ぎるが、深く考えてる暇もなくーー



「っ、ちょっと待ってくれって！それって...何処までが、」


ハニートラップの実演だったのか。

もしかして、少しの嫉妬でも、してくれたのだろうか。


けれど、この手の事に関して彼女に勝てないのはもう分かっているのだ。



『...さぁ？何処までがそうだったのかしらね？...ちゃんと来てくれたら、教えるかもしれないわ』
「〜〜〜！！」



バタン、と無慈悲に閉まるドア。


彼女のウインクなんて、早々向けられないから免疫が無い。


こちらの想いが、バレているのか、それとも、信用しているが上の戯れなのか。



けれど兎に角この任務をこなさないと1歩も進まないと分かったからには、恥も何もかも捨てて、さっさと終わらせるしかない。


不幸中の幸いは、これが単独任務だった事だろう。アシストに組織の男連中が1人でも居たら、色々と捨てきれない気がするから。






残された時間でシャワーを浴びて、用意されたスーツを着て。

普段着ないような色合いは元々ハーフ顔の彼に宛てがわれた物だから仕方ないけれど。


パン、と鏡の前で頬に喝を入れたスコッチは、よし、と呟くとパーティ会場である1階へと向かうべく歩き出したのだった。

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