3年z組の転校生2 (ページ8)

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想い出の綿菓子ページ8

あの時…俺は迷子になっていた。
高「…」
独り石段に座っていた。
高「…」
正直、怖かった。このまま俺は独りぼっちで生きていくのかと思った。
でも、迷子になった自分が、凄く恥ずかしくて石段で丸まっていた。
？「大丈夫？」
高「！」
上から声がした。驚いて声の方へ見上げると、浴衣姿の少女がいた。
？「どこかケガしてるの？」
高「いや…」
どうやら彼女は、俺が怪我して痛くて丸まっていたと思っているようだ。
？「…もしかして、はぐれちゃったの？」
高「…」
図星だった。だけど、俺は恥ずかしくて無言を貫いた。すると、少女は微笑んだ。
？「私の弟も迷子なの。」
高「へ？」
我ながら変な声が出たと思う。彼女はそんなのお構い無しに続けた。
？「弟がね、迷子になってお父さんが探しに行ったの。私も行こうとしたら、「お前も迷子になったら大変だ。」って、ここで待ってるの。」
高「…」
自分とは正反対だなと感じた。俺はまた恥ずかしくなって俯いた。
？「ねぇ。」
高「？」
顔をあげると、
高「！？」
目の前が、綿になっていた。
？「美味しいよ。」
高「…俺にくれるのか…？」
？「うん。」
高「…なんで…？」
？「だって、美味しいものを食べると幸せになるから。」
高「！」
？「はい。」
彼女は俺に綿菓子を渡した。俺は、そっと口に入れた。
高「！うまい。」
？「でしょ。」
彼女は、笑顔でそう言った。…俺は、その笑顔に釘付けになった。
すると、
？「晋助！」
高「！」
母の声が聞こえた。
高「お母さん…！」
高母「無事で良かった…！」
母は、そう言って俺を抱き締めた。
？「良かったね。」
と、少女は微笑みながらそう言った。
高母「ありがとね。…貴方も迷子？」
？「ううん。ここでお父さんと弟を待ってるの。」
高母「そう…一人で大丈夫？」
？「うん！大丈夫。」
高母「そう。この子をありがとう。…ほら、晋助も。」
高「…ありがとう。…これ。」
？「？…これ…！」
俺は、さっき射的で取った縫いぐるみを渡した。
？「にゃん太郎だ！…くれるの？」
高「わたあめくれたから…」
？「私、にゃん太郎、大好きなんだ！ありがとう！」
彼女はとても喜んでいた。よほど、その『にゃん太郎』が好きなのだろう。
？「じゃあね。」
高「あ、あのさ…！」
？「？」
高母「？」
高「お、俺…晋助って言うんだ。あんたは？」
高母「！」
母を見るとにやついた顔をしていた。
？「私は…」

…その少女の名前は、俺が食べた綿菓子の色だった。