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優しい烏 ページ35

…どれくらい、経ったのだろう。
時折、うっすら殴り付ける音が聞こえてきた。
朧「…もう、開けて良いぞ。」
貴「……!?」
それはもう修羅場の様な状態だった。まるで、晋助さんの時の様に。
三凶星のリーダー達は、血みどろになって膝をついていた。でも…それよりも、朧さんの方が心配だった。
貴「(なんでそんな怪我だらけでも立っていられるの…?)」
朧「見苦しくて悪いが、耐えてくれ。」
貴「…」
朧「…もう、充分だろう。」
猩「ああ…」
朧「…これからは、こんな回りくどい誘い方をするな。」
馬「ほぅ…お前がそれを言うのか…」
朧「…関係ない女を巻き込むな。…桜。」
貴「!はい。(私の名前、知ってるんだ…)」
朧「行くぞ。お前の仲間共が待っている。」
貴「!」
そして、私は朧さんに手首を掴まれ、体育館を出た。
朧「…細い手首だな。少し力を入れただけで折れてしまいそうだ。」
貴「あの…」
まず、何から言えば良いのだろう。すると…
貴「!?」
朧さんが倒れかけた。
貴「だ、大丈夫…じゃないですよね。」
朧「…いや、問題ない。」
いや、どう見てもあるだろう。
貴「肩、貸しますね。」
朧「いらん。…お前の方こそ、怪我は?」
貴「私は、朧さんのお陰で無事ですから、自分の事を心配してください。」
すると、
朧「そうか…良かった…」
貴「!」
朧さんは、優しそうに微笑んだ。
貴「(そんな表情出来るんだ…じゃないて!)助けてくれてありがとうございます。」
朧「…別に、当然の事をしたまでだ。…こちらこそすまない。お前を巻き込んだ。」
朧さんと初めて会ったとき、とても怖かった。だけど、あの冷酷な彼はどこにもいない。
貴「(優しい人だな…)」
まるで、晋助さんみたい…そういえば、彼もここに来ているのだろうか。

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作者名:ふわふわ | 作成日時:2019年10月27日 23時

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