水を求めて3時間。2 ページ18
遠くの空はオレンジ色から薄紫に変わろうとしていた。
私は相変わらず机に突っ伏して、ただただ水分が体内から流れ出るのを感じていた。
五時はもうとっくに過ぎている。
それなのに水は一向に出てこない。
「何かの間違いかもしれない」そう思って何度もメモを確かめたが、そこには悲しくもしっかりと『五時』と書かれてある。
今更外に助けを求めることもできない。喉が渇ききって、声が出ないのだ。
あぁ…これは何かの罰なのか…?ろくに仕事をしていないから罰が当たったのか…?主なのに罰されちゃったよ。
遠くでカラスの鳴き声が響く。正直冥界さんも今凄く泣きたい……。
……ん?
私はハッとして体をガバリと起こした。
(そうだ!!涙だって液体だ!!飲めないことはない!!)
※喉が枯れて声が出ないため、脳内の声でお送りいたします。
天才的な思い付きをしたと自分を褒め、目をカッと開いて涙腺に神経を集中させる。
「ーーーーッ!!」
しかし、どんなに頑張っても、体内の水分は涙としてではなく、汗となって出ていく。最後の力まで使い切った私はその場に倒れ込んだ。
(あぁ…私はこんな事でタヒんでしまうのか…)
そう思って目をそっと閉じた時だった。玄関の方から扉が開く音が響き、私はガバッと上半身を起こした。きっと少年が帰ってきたのだろう。
(やっと水が飲める!!)
そう思うと自然と体が動く。私はそのまま匍匐前進で玄関の所まで進もうとした。
が、
「冥界さん、ただいまです。いい子でお留守番してましたか?」
「イッ!!」
ちょうどキッチンのドアまで進んだ時に少年が扉を開けたので、ドアは地面を這っていた私の顔面に激突した。
「…何やってるんですか…」
少年がどさくさに紛れて私を犬扱いした気がするが、今はどうでもいい。
「み、水…水くれぇ……」
髪の毛を振り乱して、地を這うような声で少年にすごい剣幕で詰め寄る。
「冥界さん、貞○みたいになってますよ」
少年はそんな私にも動じず、冷静にツッコミを入れてから、持っていたビニール袋からペットボトルを取り出した。
「こんな事になるだろうと思って、兄貴さんからミロをもらってきました」
ミロ。以前なら甘いと言ってなかなか飲もうとしなかったが、今となっては輝いて見える。
私はミロを少年から奪い取り、がぶ飲みした。
・冥界さんは食わず嫌いする
「違うっ! 甘いのが少し苦手なだけだ!!」
「言い訳乙です」
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黒猫柚月(プロフ) - 少年君、面白いです! (2016年5月26日 21時) (レス) id: b28f5a93d4 (このIDを非表示/違反報告)
黒桜アルペジオ(プロフ) - たのしみにしてます!! (2016年2月26日 17時) (レス) id: b28f5a93d4 (このIDを非表示/違反報告)
白桜 - とても面白いです!いつも読ませてもらってます。 (2016年2月11日 20時) (レス) id: b28f5a93d4 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - おもしろかったです!よかったら私の作品 見てください (2016年2月10日 15時) (レス) id: d722fb9a07 (このIDを非表示/違反報告)
sayaka(プロフ) - ヘモグロビンさん» いえいえ。ありがとうございます。 (2015年12月25日 20時) (レス) id: a1946caf5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でんでんむしの奇行種 x他2人 | 作成日時:2015年3月7日 20時