ムチャブリ・エチュード ページ50
「ねえ海ちゃん」
『はい』
「一回お兄ちゃんって呼んでみてくれない?」
『…はい?』
岡本さんは真顔でそう言った。私は台本からあげた頭を傾ぐ。
『い、いや、構わないですけれど、嫌じゃないですか?私が妹って』
「いいの!お願い!」
『…わかりました、じゃあちょっとだけ』
人の事をお兄ちゃん、なんて呼ぶの、20年ぶりくらいだ。小さい頃…2、3歳くらいの頃は、叶乃ちゃんも林ちゃんもお兄ちゃんと呼んでいたけれど、識別できないと気づいた頃から名前呼びに変更した。
『そういえばあれですか、…お兄ちゃんは、かな恋クリスマスのイベントはでないんですか』
かな恋っていうのはこれから収録するアニメ―“叶わぬ恋でも蒼き春”の略称。今は二期で、原作は大ヒット漫画。
「その日別のイベントあるんだよね…」
『そうなんですか…残念です』
「…ねぇ敬語やめない?」
『えっ』
「いや、お兄ちゃん+敬語って、ほら」
『あ、そうですね…そうだね』
先輩にタメ口…とちょっと怖じ気づく。でもやるとなったら手は抜けない、とか調子に乗ってみる。
「何か飲み物買って来ようかな、何飲みたい?」
『えっ、いいで…いいよ、悪いから』
「わかった、じゃあ適当に買ってくる」
『うぇぇっちょっと待って!!』
自販機の方に出ていこうとする岡本さんの腕を引く。
『待って!大丈夫ですから!お兄ちゃ』
ガチャ、という音に遮られて、言葉は途中で消えた。
…ガチャ?
バッと扉の方を見る、
『待ってくださいドア閉めないで鈴村さん!』
鈴村さんは白けた目で一度こちらを見て、何かいけないものを見たような目をしてそのまま扉を閉めかけた。慌てて扉を開ける。
『ちが、ちょっとしたゲームです!』
「…いいよ、そういう…そういうアレ、俺気にせぇへんよ」
『だから違いますって!めちゃめちゃ目ぇ泳いでるじゃないですか!おn…岡本さんもなんとか言ってください!』
「…いやぁ、俺はもう満足です」
『そうじゃない!!』
その場から逃げようとする鈴村さんと半ば夢心地の岡本さんの手をそれぞれつかんで、とりあえず止める。
『ぉ、お兄ちゃん!』
「はい!」
『ちゃんとして!』
「あ、俺もお兄ちゃん言われたい」
『鈴村さん!』
「なーに?」
『しっかりして!』
「えぇぇ欲求不満」
『そんなこと言われましても…』
---
「って事があってな」
「へぇー」
『何で言っちゃうんですか鈴村さん』
「俺も言ってほしいなぁ」
『しかもよりによって櫻井さんに!!』
189人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ryoriisa(プロフ) - ゆみらさん» ボードに移動するので、そちらでお話もしましょう! (2018年9月24日 7時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» こちらのボードなどでのやり取りなら可能なのですが、Instagramは使い方がよくわからなくて(-_-;)本当にごめんなさい… (2018年9月23日 18時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» そうなんですね…残念です…ワガママを言ってすみませんでした。 (2018年9月23日 18時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» 成程!そういうものなんですねぇ!面白そうですね!申し訳ないですがツイッターしかやっていないんです… (2018年9月23日 17時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» リレー形式はですね、どちらかが設定、登場人物書いていき、サブタイトルなども決めながら交互に書いていくという感じです!もしよかったらぜひやりたいなと思ってコメントをさせていただきました;;;;ちなみにSNSでInstagramやっていますか…? (2018年9月23日 14時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:留鳥カナメ | 作成日時:2018年8月29日 12時