【声優】瀬良ちゃんが愛されている。のいち。

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「トリックオア?」

『…ト、リ…えぇと』

「いや忘れないでよ、調べてらっしゃい」

『はーい』

朝、まだ起ききっていない私と目を合わせて、遊佐さんは話を振った。眠すぎて思い出せない事件。携帯を起動して、検索する。

『あ、予測変換に出てきました、“トリックオアトリート”!』

「はい正解、お菓子はないんだけどね」

『じゃあトリックですね、何がいいですか…作ってきたドーナツ食べますか』

「それ僕がトリックオアトリート言う方じゃん」

『んふふ、違いますよ、私が遊佐さんにドーナツ食べさせるっていういたずらです』

「…そうなの、じゃあ貰おうかな」

多分少しの間は、あきれた遊佐さんのそれだ。
鞄の中からシュガーレイズドドーナツを取り出す。

「あ、これ美味しい。海ちゃんスゴいね毎回」

『そうですか?よかったです』

「…あ」

遊佐さんはドーナツを食べ終わり、パッと向こうの方を見た。

「海ちゃん、あっちにいるおじさんにもハロウィンしておいで。僕ドーナツ食べてるから」

遊佐さんの視線の先を見る、

『了解です!』

少し遠くにいるその人に、後ろからゆっくり距離を詰める。気づかれないように、足音と呼吸に最大限の注意を向ける。

『トリックオアトリート!!』

後ろからタックルをかます。…いや、体格差的に飛び付いただけだけれど。

「っおぉー…ビックリした、じゃあトリートで」

ほい、と缶のコーンスープをもらった。

『えっ、ほんとにいいんですか安元さん』

「うん、いたずらやだもん俺」

「残念だなぁ安元君、折角ドーナツ食べられるチャンスだったのに」

奥から歩いてきた遊佐さんに、安元さんはあぁ、という顔をする。

「瀬良、遊佐さんに言われたんだろ、俺んとこ行けって」

『そうです』

「なんでわかったの、スゴいね」

「寝起きのこいつにそこまで考える脳無さそうですからね、しかも今日もう11月じゃないすか」

『何言ってるんですか、10月33日ですよ、安元さん』

「そうだそうだー」

「…いやどっちにしろハロウィンじゃねえ!!」

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