宝箱 ページ43
「あっ、海ちゃんちょっと待って!!」
『はい…?』
呼び止められて足を止めた午後四時、振り向くと宮野さん。無条件にぐいっと首を上に向ける、叶乃ちゃんと話すときもこんな感じだ。
『どうしたんですか宮野さん』
「初写真集おめでとう!」
はいこれ、と宮野さんが渡してくれたのは、
『…?なんですか、これ』
可愛らしくて細長い箱。綺麗にラッピングされていて、普段だったら到底自分から手にしようとは思わない。
「開けてみて」
『えっ、いいんですか』
「うんまぁ海ちゃんにあげたわけだからね」
『あっそうですよね、有り難うございます』
底面のテープをそっとはがして、紙を破かないように開いていく。箱は綺麗な紺色で、金の箔押しがされていた。…さてはお高いやつでは。
箱を前に躊躇して宮野さんを見ると、早く開けてと顔で訴えられた。
…開けるしかない、
『わ…!』
ブレスレットウォッチ。アンティークなデザインで、ベルトがレザーでできている。
『可愛い…いいんですかこんな素敵なもの、私なんかが貰っちゃって』
「私なんかとか言わないの!絶対似合うと思って選んだんだから」
『う、有り難うございます…大事に大事にします』
傷つけないようにそっと蓋を閉める。今すぐにでもつけようかと思ったけれど、あいにく今日は自転車だ。いただいてすぐにどこかにぶつけたりなんかしたら、もう宮野さんと目を合わせられないかもしれない。
「どうしたのそんな険しい顔して」
『あっいや、何でもないです。…ホントに有り難うございます宮野さん』
「いいえー、俺があげたかっただけだから!」
爽やかな宮野さんは今日もキラキラしながら歩いていった。いつもだったら途中まで一緒に帰らせてもらうこともあるけれど、今日は別。
自転車で坂を下りながら、帰ったらどこに飾ろうかなと考える。実家だったら上にものを置けるローチェストがあるからそこでいいのだけれど、あいにく今のマンションには持ってきていない。
…あ、でも確か、ラックの真ん中の段が空いていたっけ。
『やばい、どこにつけていこう』
楽しみな反面、いつもは手にしないテイストのそれに抵抗があるのも確か。でもやっぱり楽しみの方が大きくて、冷たい風を感じながら頬が緩む。
エレベーターにのっても治らないニヤニヤを流し込もうと、水筒を取り出そうとして開けた鞄には時計の箱。
完全なる自滅に苦笑も混じって三割増しの笑いが、扉を開けても収まらなかった。
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ryoriisa(プロフ) - ゆみらさん» ボードに移動するので、そちらでお話もしましょう! (2018年9月24日 7時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» こちらのボードなどでのやり取りなら可能なのですが、Instagramは使い方がよくわからなくて(-_-;)本当にごめんなさい… (2018年9月23日 18時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» そうなんですね…残念です…ワガママを言ってすみませんでした。 (2018年9月23日 18時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» 成程!そういうものなんですねぇ!面白そうですね!申し訳ないですがツイッターしかやっていないんです… (2018年9月23日 17時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» リレー形式はですね、どちらかが設定、登場人物書いていき、サブタイトルなども決めながら交互に書いていくという感じです!もしよかったらぜひやりたいなと思ってコメントをさせていただきました;;;;ちなみにSNSでInstagramやっていますか…? (2018年9月23日 14時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:留鳥カナメ | 作成日時:2018年8月29日 12時