スイッチが入るまで ページ41
『需要がない…』
「あるからこの話が来たんでしょうが、いい加減腹括れ」
『絶対ないよ…』
とあるスタジオ、打ち合わせ用の会議室。杉田さんと同じ現場じゃないと言い切れたのは、
…スタジオはスタジオでもフォトスタジオだから。
「スタイリストが叶乃なだけよかったと思えよ、これで初対面だったら海死んでたろ」
『正解』
今回は初めての写真集のお仕事。
今までも何回か写真のお仕事はあったし、宣材写真や雑誌のインタビューを受けたときに写真を、というのもあった。…でも今回は違う、写真がメインだ。…誰がお金を払って私の顔なんかみたいと思うだろうか。
『うっ、売れなかったらどうすんの』
「それはねえから大丈夫」
『なんで』
「少なくとも父さんは買うだろ」
『いやそうかもしれないけど』
口八丁手八丁で丸め込まれる、…丸め込まれなかったとしても結局はもう来てしまってるしお話は受けているけれど。
椅子の上に縮こまって痛む胃を抑えていると、ノックと共に扉が開いた。
「失礼しまーす」
やっほう、と手を振るのは
「どう?腹括った?」
『無理だって…私叶乃ちゃんみたいに整った顔してないし』
まだ言ってる、みたいな顔して二人でため息つかないで欲しい。…本当に緊張しているのだ、人に顔を凝視されるのが苦手だし。
「海は可愛いよ、大丈夫」
「俺もそう思う」
『それ絶対家族エフェクトじゃん、見え透いたお世辞要らない』
自分で言うのもなんだけど、こうなった私は非常に面倒くさい。ああ言えばこういう状態だ。だから、基本人前では絶対に出さない…が、相手が家族となればまた別。昔から何回かこういうことはあった。だがそれは相手にとっても同じ、こういうときの対処法は心得ている。
「…よし、行くぞ」
「よっしゃ」
二人で片方ずつ私の腕を掴んで、ズルズルと引きずる。私は両足で踏ん張って精一杯抵抗するけれど、男二人に勝てるわけもなく。
『うあああ』
「瀬良海入りまーす」
そう、こういうときは強行突破が一番なのだ。整った設備とプレッシャーに目が眩む。
「それでは撮っていきますね」
細かいイメージやシチュエーションの指示を聞いて、バチンと両頬を叩く。腹は括った。
『よろしくお願いします…!』
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「ほんとに、スイッチ入れるのが大変」
「そうだねぇ」
「入るとエグいんだけどな」
「俺ああいう海かっこいいと思うんだ、家族の誰より」
「全会一致」
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ryoriisa(プロフ) - ゆみらさん» ボードに移動するので、そちらでお話もしましょう! (2018年9月24日 7時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» こちらのボードなどでのやり取りなら可能なのですが、Instagramは使い方がよくわからなくて(-_-;)本当にごめんなさい… (2018年9月23日 18時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» そうなんですね…残念です…ワガママを言ってすみませんでした。 (2018年9月23日 18時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» 成程!そういうものなんですねぇ!面白そうですね!申し訳ないですがツイッターしかやっていないんです… (2018年9月23日 17時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» リレー形式はですね、どちらかが設定、登場人物書いていき、サブタイトルなども決めながら交互に書いていくという感じです!もしよかったらぜひやりたいなと思ってコメントをさせていただきました;;;;ちなみにSNSでInstagramやっていますか…? (2018年9月23日 14時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:留鳥カナメ | 作成日時:2018年8月29日 12時