『止まらなくなっちゃうんです。』 ページ40
目の前に杉田さんがいる。信号待ちをしている。
私はゆっくり自転車を降りて、どうにか話しかけたいと考える。
最近、杉田さんとお仕事を一緒にすることがあまりない。今日だってたまたま同じ信号に止められただけで、行き先は違う。
久々にお話ししたいとは思うけれど、何を話せばいいのかわからない。この間何か話したいことが思い浮かんだはずだったのに、今になって出てこない。
信号の待ち時間に焦らされて、手慰みに鞄のボタンを明け閉めするけれど、勿論鞄に話のネタなんか入っているわけない。
何もできないまま、信号はゴーサインを出してしまって、
『あ…』
やるせなさが思わず声に出る。回りのひとは皆動き出して、私もノロノロ歩きだす。横断歩道の白黒を見ながら歩いて、渡り終わった頃。
「…瀬良さーん?」
白黒の横縞から条件反射で顔をあげると、
『杉田さん?!』
「あーよかった、大人先生だった。…知らない人だったらどうしようかと思った」
そこに立っていたのは杉田さん。
あおちゃんが子供先生と呼ばれた流れで私が大人先生と呼ばれるようになったのも今は昔。
自転車を押しながら杉田さんと歩く。
「なんか大人先生っぽい声がするなぁとは思ったんだよね」
『あれはその…杉田さんに話しかけようと思ったら信号が変わっちゃったんで』
「何を?」
『いや、…最近お話しできてないなと思っただけです…』
「はぁ…」
ため息が深い杉田さん。…引かれてる?
「ほんと妹。妹先生だわもう」
『えっどういうことですか』
そういえば潤さんとか津田さんも似たようなこと言ってた気がする。
と、唐突に思い出した、
『そうだ、カタクリさんがめちゃくちゃかっこよかったですって言おうとしたんだ』
「え?」
ONE PIECEの、杉田さんが演じているキャラクター。もともと好きでよく見ている。
『もうあの、お腹の底の方に響く感じの杉田さんの声大好きなんです私。ほんとにかっこよくて、それを杉田さんに言いたくて』
一度話し出すと止まらなくて、最終的に機関銃みたいに好きなポイントを述べていく時間になってしまった。杉田さんはずっと聞いていてくれたけれど、今度ちゃんとお詫びをしようと、別れたあとに思った。
---
「あれ、杉田耳真っ赤やん、どないしたん」
「あ、鈴村さん…ほめ殺されました」
「あぁ海か…ほめ殺し無双やからなあいつ」
「あれで死ななかった人聞いたことないっすよ」
「人ほめるのうまいもんな、無自覚に」
189人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ryoriisa(プロフ) - ゆみらさん» ボードに移動するので、そちらでお話もしましょう! (2018年9月24日 7時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» こちらのボードなどでのやり取りなら可能なのですが、Instagramは使い方がよくわからなくて(-_-;)本当にごめんなさい… (2018年9月23日 18時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» そうなんですね…残念です…ワガママを言ってすみませんでした。 (2018年9月23日 18時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみら(プロフ) - りささん» 成程!そういうものなんですねぇ!面白そうですね!申し訳ないですがツイッターしかやっていないんです… (2018年9月23日 17時) (レス) id: 46d3533f79 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ゆみらさん» リレー形式はですね、どちらかが設定、登場人物書いていき、サブタイトルなども決めながら交互に書いていくという感じです!もしよかったらぜひやりたいなと思ってコメントをさせていただきました;;;;ちなみにSNSでInstagramやっていますか…? (2018年9月23日 14時) (レス) id: 6d61661040 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:留鳥カナメ | 作成日時:2018年8月29日 12時