【声優】瀬良ちゃんが愛されている。のいち。

忘れていた ページ4

ピコン、とスマホが鳴る。

『わ、びっくりした』

あまりスマホを見ない私は、スタジオに入るとき以外通知音を大きめにしている。そうしないと本当に気がつかない。今のはLINEの通知音、冷たい画面をコツコツと指で操る。

aoi-yu-kiお買い物に行こう!!

相手は悠木碧ちゃん。答えは1択、

せら勿論!

次のお休み(=買い物の日)までに、何を買うのか聞いておこう。
…と思っていたけれど、気がついたら当日の朝。あちゃー、と思いながら昨晩決めておいた服を着る。あおちゃんはおしゃれだから、いつも着ていく服に悩む。

「海、おはよー!ごめん、待った?」

相変わらず可愛いあおちゃんは、フレアスカートがよく似合います。ふわふわして兎みたい。

『ううん、今来たとこ』

「今日はねー」

『ん?』

「来週に迫りましたイベントの、衣装を買いに行きましょう!」

『ぇあっ』

「…さては海、」

『忘れてました…』

そう、某イベント。豪華声優陣が彩る、晩夏の夏祭り。

「はぁ〜、よかったね今日来て!」

『ホント…有り難うございます…』

イベントがあることは頭にあったけれど、衣装の事をすっかり忘れていた。今度のイベントは浴衣指定があったんだった、危ない危ない。

「それではいざ、浴衣コーナーへっ!」

『おー』

というわけで、お祭りシーズンも軒並み収まったこの時期、そこそこ空いている浴衣コーナーへ直行。それぞれ自分のキャラクターをイメージしながら浴衣を選び、試着した。

「どうかな?」

最初はあおちゃん。小柄で可愛いあおちゃんにはぴったりの柔らかいパステルカラーの水色に、涼しげな水草と金魚があしらわれている。

『うん、やっぱ可愛い。帯の薄い黄色も似合ってる』

あおちゃんのキャラクターは元気な悪戯っ子、小さな金魚が沢山跳ねているのもイメージにぴったりだ。

「じゃ、これにする!海は?」

選んだのは、薄紫と黒の矢がすり。所々に金魚と波紋のシルエットが散っている。帯は白に薄いグレーでストライプの入ったものにした。
私の演じている子は頼れるようで実は抜けている、天然キャラ。見た目の落ち着いた感じに金魚でアクセントを足してみた…、つもりなのだけれど。
試着室のカーテンをそっと開ける。この瞬間が一番緊張するのだ。

「あっ…、めっっっちゃ綺麗」

『帯締めは赤にしようと思って』

「海似合うね!とっても!」

容赦なくほめちぎるあおちゃん。この笑顔で今日来てよかった、と思える。

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