海人ルート【 1 】─ 3 ページ41
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『半分、夢の中にいる感じもするけど、でも風は気持ちいいし、水は冷たいし、食べたら美味しいし、眠くもなるし怪我したら痛いし。うまく言えないけど、あー生きてるなーって。夢にしては現実味もあるから、今できる事をして行けば、目が覚めたとしても、経験として私の中に残るかなって思ったの。あとは……』
「あとは?」
『皆に恩返し、したかった』
「恩返し?」
『あの時助けてもらわなかったら、確実にアウトだった。助けてくれたのが悪い人だったら酷い目にあっていたかもしれない』
もうほんとに、そこは……売られちゃったりとか、運が悪ければそういう事もあったかもしれないから……
『でも、海人くん達は、こんな身元不明のどう見ても怪しい存在の私を守ってくれて、連れて歩いていろんな事を教えてくれて………感謝しかないです』
なんだか照れ臭くて、ちょっと早口になっちゃったのは許して欲しい
『だから、恩返ししたいって気持ちが強くて、怖いとか不安とか思ってる暇がない、かな』
「………………」
『あ、あとね、とにかく皆といるのが楽しいの!あんな凄いもの見れちゃうし!』
海人くんから川へ視線を移すと、クマは結構なペースで魚を捕まえていて、もうすぐ籠がいっぱいになりそうだ。
「あんなんで良ければ、いつでも描くよ!」
『海人くんにとっては普通なのかもしれないけど、ほんとに凄いんだってば!前にもらった花もすごく嬉しかった。だから自信持っていいの!さっきから凄いしか言えなくて切実に語彙力が欲しい!』
「ありがとう、俺、もっと凄くなるから!」
『うんっ私も頑張る!』
お互いに宣言したところで、クマが帰って来た
『いっぱい獲れたね!ありがとう』
頭を撫でてやると、嬉しそうに擦り寄ってくる
「ご苦労さま!」
海人くんの声をキッカケにキラキラと光って消えた
「さ、戻ろっか!この籠も描いたやつだから、もう少ししたら消えちゃうんだ」
『わっそれは大変、急ごう!』
二人で話せてよかった
海人くんはたくさんたくさん苦労して努力してるからこそ、人の痛みも分かるし、優しいんだって分かった
今日もきっと、
私の事を心配して誘ってくれたんだよね
『海人くん』
「んー?」
『ありがとう、たくさん喋ったらスッキリした』
「ん、俺も!」
魚のいっぱい入った籠を抱え直しながら微笑む海人くんがとても輝いて見えた
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作者名:レイ☆ | 作成日時:2019年10月10日 23時