第3話。 ページ10
ある日、シンの家に向かう途中の公園で妹を見かけた。
妹はベンチに腰掛けて下を向いたまま動かない。
ちゃんと生きてんだろうな？
いや、微かに体震えてんな。
もしかして泣いてんのか…？
話しかけるべきか、このまま素通りするべきか。
…………。
あーめんどくせぇ。
「おい…何して…」
「また泣いてんの？」
俺の決意の一言は突然現れた1人の少年にかき消された。
…げ。
妹、彼氏いたのかよ。
妹は少年のその声に顔を上げポロポロと大粒の涙を流している。
なんだ痴話喧嘩かよ。
俺はそれ光景に何となく安心してシンの家に向かうことにした。
ガタガタッバタンッ
家に着きチャイムを鳴らそうとして手を伸ばすと、異常な騒音と共にシンが勢いよく出てきた。
「お…シン、随分と荒いお出迎えだな。」
「…A見なかったか！？」
シンは俺の言葉なんか耳に入っていないかのように荒々しく声をあげた。
「妹がどうかしたのか？」
「俺が風呂に入ってる間にいなくなったんだよ！」
こいつ…なんでこんなに焦ってんだ？
「安心しろ、お前の妹ならさっき彼氏とイチャついてたぞ」
「は…？どこでだよ！！」
「そこの公園だけど」
俺から場所を聞くとシンはすぐに玄関を飛び出した。
「おい、ちょっと待てって！」
「急いでんだよ、邪魔すんなっ！」
俺は明らかに様子がおかしいシンの腕を掴んで玄関に引き戻した。
「いいから一回落ち着けって」
「離せっていってんだろ！！」
シンは俺が抑えているにも関わらずまだ妹の元へ行こうとする。
「シン！！！」
俺は耐えきれず大声でそう叫んだ。
するとシンは、
「……わり。」
と一言だけ言って今度は力をなくした様に玄関に座り込んだ。
「なぁシン…そろそろ教えてくれよ。」
「………」
「お前…もう限界だろ？」
「………っ」
「しばらく待ったんだ、いい加減教えてくれよ」
「……もう秋か」
シンはしばらく経った後、玄関に入ってくる秋風を感じながらそう呟いた。
「あぁ…時間って過ぎねぇくせに終わるとあっという間に感じるよな」
俺は玄関の上がり框に腰を下ろしそう答えた。
「…あっという間…か。」
「……？」
「俺にとっては滅茶苦茶長くて苦痛の毎日だった。」
「…おい、シン…」
「毎日毎日、後悔と怒りだけが募っていく」
「…それは誰に対して…？」
俺がそう聞くとシンは俺の方を見て、
「後悔は昔の俺に、怒りは今の俺に…かな」
と儚げに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kitty(プロフ) - コメント失礼致します。続編のパスワードを教えていただきたいのですがよろしいでしょうか？ (2021年3月1日 2時) (
レス) id: ec02268633 (このIDを非表示/違反報告)
ツミキ(プロフ) - こんにちは！コメント失礼します！続編のパスワードをお伺しでもよろしいでしょうか！ (2021年2月20日 21時) (レス) id: 38aa17f1c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - コメント失礼します！よろしければ続編のパスワード教えていただきたいです！よろしくお願いします。 (2021年2月20日 8時) (レス) id: 69753dea94 (このIDを非表示/違反報告)
なの(プロフ) - こんにちは、コメント失礼致します。いつも作品楽しく読ませて頂いております。もしよろしければ続編のパスワードの方お伺いしてもよろしいでしょうか？よろしくお願い致します。 (2021年2月15日 7時) (レス) id: ad7059f36c (このIDを非表示/違反報告)
あられ@帝国民(プロフ) - コメント失礼します！続きがすごい気になるお話でした！！もし主様がよろしければ、続編のパスワードを教えて頂きたいです！よろしくお願いいたします！ (2021年2月14日 14時) (レス) id: dc7474ee4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まりあ | 作成日時：2019年6月4日 4時
