義兄は私を嫌っている。part3

第1話。 ページ8

「なぁなぁ、ナツメ！！将来は俺と一緒にバンドマンになろうっ」

そう誘われたのは小学5年の秋だった。

シンとは幼稚園からの言えば幼馴染というやつだ。

俺はバンドなんて全く興味なかったし何より俺はマセガキだった。

「はぁ？何夢見てんだよ。そんなんで飯食っていけるわけねぇだろ。」

ほらな、今では自分でも思う。

マジで可愛くねぇクソガキだ。

俺はシンのニコニコ顔から目を背け読みかけの漫画に視線を戻した。

「ナツメは歌うめーからボーカルだな」

「おい、勝手に決めんな！」

俺がよく知るシンは暇さえあればベースを弾いていて無駄に甘え上手でよく笑う奴だった。

だから自然と人が周りに集まったし誰からも愛されていた。

そして、もうわかっていると思うが俺の性格は真逆。

口が悪く無愛想それに加えてガキの頃はかなりの人見知りだった。

でもそんな俺をシンはいつもみんなの輪の中へ引っ張ってくれた。

そんな奴だから俺は今のお前が心配でたまらないんだよ…。







「ナツメ、また同じクラスだな！」

シンは張り出されたクラス表を見てニカッと笑った。

中学に上がる頃にはこいつは俺の唯一の親友になっていた。




なぁ、シン…



お前が俺を引っ張ってくれた時みたいに俺もお前の手を引いてあげてぇよ。



だけどお前から聞いた真実はあまりにも重くて、重すぎて…


俺はなんて言葉をかけていいかわからなかった。


泣き虫で優しいお前が抱えられるほど単純なものじゃねぇだろ？


なのに…お前は一体いつまで俺の真似をして大事なものを失うつもりなんだ…？



もうこれ以上…自分を傷つけんなよ。

第2話。→←＊第2章。(ナツメ)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す