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第3話。 ページ35

「何やってんだよっ!!」

肩を震わせて泣いている私の背中を撫で続けていてくれた田ノ浦くんの手がその声でびくりと反応した。

…お兄ちゃんが帰ってきた。

私の止まらなかった涙はミユキお兄ちゃんの声でぴたりと止まった。

「帰れよ」

みゆきお兄ちゃんは低い声でそういうと私に付き添っていてくれた田ノ浦くんを無理やり立たせた。

「俺は帰りません」

「…あ?」

田ノ浦くんやめて…

「俺が渡辺さんを連れて帰ります」

「お前バカなの?」

いつも冷静なお兄ちゃんが今はだいぶキレてしまっている。

これはまずい…

「田ノ浦くん…お願い帰って…」

これ以上お兄ちゃんを怒らせないで…

「妹もこう言ってるだろ?早く帰れよ」

「帰りません」

田ノ浦くん…

なんで…?

「ふざけんなよお前。出るとこ出るぞ?」

「そうなって困るのはお兄さんですよね?」

やめて…

言わないで…

「貴方達がやっていることは犯罪です」

それを聞いたお兄ちゃんがゆっくりと私を振り返る。

「…お前…話したのか?」

ああ…終わった。

この後に起こることは想像できる。

でもきっと私が思ってる以上の報復だ。





「その反応からすると彼女が言ったことは本当なんですね」

田ノ浦くん…なんで?

「彼女の刺し傷も見ました。」

「やめてよっ!!言わないで…」

そう叫ぶ私の顔をお兄ちゃんは強く掴んで引き上げた。

「裸も見せたのか?」

今まで見たこともないような怖い顔。

「なんとか言えよ、なぁ?」

怖い…

怖いよ…

「彼女から手を離せ!!」

田ノ浦くんはそう言ってお兄ちゃんの手を私から払い除けた。

「大丈夫か?」

すかさず私の頬に触れ安心したように撫でる彼。

「…なんで言っちゃうの?酷いよ…」

私はそんな優しい彼の手から顔を背けた。

「ごめん、渡辺さん…でもこれは俺の覚悟を決めるためだ」

「…え?」

「一緒に逃げよう」

え…

今何言って…?

「今度はちゃんと俺の手を掴んで」

田ノ浦くん…

貴方は本当に優しいね。

でも…

「無理だよ、いけない…」

私は彼の背負っている荷物を見て最初から私を連れ出すつもりだったんだと確信した。

だけど私には貴方の人生を無茶苦茶にすることはできない。

「ごめんね…でも私…」

「無理じゃない!!!」

私の意志が彼の声にかき消される。

「田ノ浦くん…」

「俺を信じて。」

「無理だよ…」




「頼む…」

「……っ」




「頼から一回くらい俺を信じてみてよ。」

第4話。→←第2話。



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kitty(プロフ) - コメント失礼致します。続編のパスワードを教えていただきたいのですがよろしいでしょうか? (2021年3月1日 2時) (レス) id: ec02268633 (このIDを非表示/違反報告)
ツミキ(プロフ) - こんにちは!コメント失礼します!続編のパスワードをお伺しでもよろしいでしょうか! (2021年2月20日 21時) (レス) id: 38aa17f1c1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します!よろしければ続編のパスワード教えていただきたいです!よろしくお願いします。 (2021年2月20日 8時) (レス) id: 69753dea94 (このIDを非表示/違反報告)
なの(プロフ) - こんにちは、コメント失礼致します。いつも作品楽しく読ませて頂いております。もしよろしければ続編のパスワードの方お伺いしてもよろしいでしょうか?よろしくお願い致します。 (2021年2月15日 7時) (レス) id: ad7059f36c (このIDを非表示/違反報告)
あられ@帝国民(プロフ) - コメント失礼します!続きがすごい気になるお話でした!!もし主様がよろしければ、続編のパスワードを教えて頂きたいです!よろしくお願いいたします! (2021年2月14日 14時) (レス) id: dc7474ee4c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まりあ | 作成日時:2019年6月4日 4時

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