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太宰side
『太宰さん』
彼女が初めて、私の外套を掴んで、頼ってきた日。
それは、ある女がマフィアに入ってから、丁度1ヶ月後だった。
その女は、名を杏藤璃亞(アンドウ リア)といい、第一印象は意外にも普通だった。
杏藤は、どうにも私の部下であるAAを気に入らないらしく、あらゆる方法で戒めをあたえた。
…わかりやすく言うと、Aが周りの人間から省かれた。
何故新入りの杏藤に皆が従うのかは定かではないが、憶測では弱みを握られたのだと思う。そして、多人数がやっている事にはそれに合わせるのが人間という物。自然と周りも合わせる。こればっかりは仕方がない。
けれどAは明るいのが取り柄。無視されてもめげずに笑っていた。
そんな無理をしていれば、精神も肉体もそのうち疲弊する。
そして、彼女が頼ったのは、誰よりも苦痛を与えていたであろう私だったのだ。
私は幹部故に省いたりなどはしていないが、その訓練は我ながら過酷なものだった。
一日平均十時間、酷い時は二十時間ほどみっちりと異能の制御と前回突破を専用の部屋でやらせる。
私が暇な時は監督をし、課題を達成出来なければ罰を与えた。
鞭や刃物、銃、私自身で傷つけ、罵倒をし、暴言を浴びせた。
芥川くんにも似たようなことをしているが、彼の方がまだマシだと自分でも思う。
「…よく耐えたね。いい子だよ、A」
こんな台詞、よく出てきたものだ。
その瞳に涙をためながら私にしか縋ることの出来ない彼女の存在が、ほんの少し私の心の溝を埋めた。
だから、その日私は、彼女を初めて抱き締めた。
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あると(プロフ) - 続きが気になる、、!更新頑張ってください!!! (2022年6月20日 18時) (レス) @page7 id: dd7bcd39b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めあ | 作成日時:2019年5月12日 16時