【twst】ゆっくり砂糖は溶けていく (ページ32)

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貴女はきっとプリンセス/AZUL中・② ページ32

「授業はどうでしたか、Aさん。」

『アズール。...先生の説明も分かり易かったし、それなりには、って所かな』

実験室を出た所で、ゴーグルから眼鏡へと取り替えているアズールに話し掛けられた。ページをめくって纏めた箇所を見せる。

この後は昼休み。ジャミルさんは主人の元へ行かなければならない、と述べた後早足で教室へと向かった。
これからは朝約束を取り付けた通り、あの双子と合流出来るかは定かでは無いが大食堂で昼食を取るらしい。彼と廊下を並んで歩く。

「ジャミルさんに気に入られたようですね」

『...そう?親切だった、とは思うけれど』

「彼の本当の実力をこの目で見たいものです。
以前よりかは変わられたとは思うんですが、まだご自身の能力発揮への躊躇があるように見えますね。実に勿体ないです、この前なんて...」

相槌を打ちながら、彼にしては饒舌だ、と思った。やはり、この学園は彼にとって大きな影響を齎すものだったらしい
出会って間もない頃、アズールは他者に対しても自分自身に対しても自らは決して話そうとはしなかった。何かを問われ、受け答え、嫌だと思った内容には首を振るか濁すかのどちらか。
言えば、自分を知られるのを恐れていた──
...少なくとも、私にはそう見えていた。暗く深い海の底で、たった1人だけで、他者からの手を振り払いながら、静かに泣いている

私には、そう見えていた。

「Aさん?大丈夫ですか??」

こんな私が、彼に言える立場な訳が無い。
相手が離れていってしまうような感覚は、きっと私の方が感じている、なんて
精一杯、強がっても覆い隠せないものがある。心臓を取り巻くような黒い渦は、一生かき消す事は出来ないのだろうか。

『...あぁ、ごめん、私は大丈、ッわ、』

考える事を辞めようにも頭から離れない感情に侵される感覚に囚われながら、アズールの隣を無心で歩き、一つ、角を曲がった瞬間。

「アンタ、危ないでしょう。前を見なさい。」

『ッえ、あ、申し訳ありません、』

「!!っ貴女、だから言ったでしょう...!」

「あら、アズール。ジャミル以外と一緒に居るなんて珍しいわね」

キラキラと、周りに黄金の薔薇が見えたような気がした。
慣れない強い香りなはずのなのに、ふんわりと心地よく匂う香水。身体が衝突する前にアズールが腕を引いてくれたみたいだったが、放たれた言葉には咄嗟に謝罪で返してしまった。ちらりと上を見れば、煌めく星のような顔立ち。

素直に“綺麗”だと思った。