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『彼奴ら...』
片手に持った小瓶を揺らして見せた途端に、ふ、っと緩いだ彼の目元を眺めながら、疑問を抱いたバイパーさんの言葉を繰り返す。
「残念ながら双子の片割れと同じ部活なものでね。君の事を楽しそうに話してたよ」
『!!...バイパーさ「堅苦しい、上の名にしてくれ」あぁ、はい、ではジャミルさん。
もしかして、“ウミヘビくん”ですか?』
「...フロイドが巫山戯て言う名前か」
ピンと来た。一昨日、いや、その前の日だろうか。部活動の休憩時間、フロくん...フロイド・リーチが私について部員に少し話したと聞いた。彼は私を“オジョーサマ”と呼ぶように、学園の生徒には海の生物の渾名として使っているようだった。
ウミヘビくんとカニちゃんに話した、と楽しそうに尖った歯を見せる彼が脳に思い浮かぶ。
『.....なら、初めから幼馴染だと分かっていたって事ですね。知っていて聞いたのですか』
「言い方が悪いな、気分屋で飽き性な彼奴の話が本当かどうか確かめただけさ。」
言い表せば、黒が混じった暗めの紅色、だろうか。彼の魔法薬学専用ノートを覗き込んで、用意してきた薄紫色の真新しい表紙をめくる。
日付、天気、ペアの相手...も書くのか。薬品の名前は短期間用浮遊薬、効果は一時的に重力に逆らい例で言う風船のように空中に留まる。作用時間は今回は40分、効果はナツメグの量によって調整出来る。混ぜる速度は3秒に2回転半、入れる材料、その順番は───...
「こんなもんだろ」
『ありがとうございました』
出来るだけ見やすく纏めたノートからペン先を離し、胸ポケットへと差し込んだ。
「参考になったなら良いさ」お礼を言って頭を下げてみせた私に彼はそう呟いた後、片手の親指と人差し指で自身の顎を支える。何となく、アズールが照れた時に見せる仕草に似ていた。
「思った以上にあの寮には相応しくないな。
どうだ、スカラビアに来てみないか?」
『...学園長に締められる未来が見えますね』
ジリ、っと距離を縮めたジャミルさんに、忙しそうに動き回りつつ授業への乱入を企む学園長様の顔を思い出しながら、丁重にお断りしてみせる。何故だか私の反応が面白かったらしく、彼は大人びた表情を崩してクシャッとした笑顔を浮かべた。へぇ、なんて感心していれば、彼はクルーウェル先生の実験終了の合図と共に、ぽん、っと私の肩を掌で優しく叩いた。
「っはは、冗談さ。だが、気が向いた時は遊びに来ると良い。盛大に持て成してやろう」
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作者名：愛奈 | 作成日時：2021年1月2日 5時
