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あ、っと今度は私が声を上げた。2人とのお話が楽しくて忘れていた、というのが顔に出ていたのか静かに笑われる。
よしよし、っとジェイドくんに頭を撫でられるが、彼の元へ連れて行ってくれるとのことだ。
偶然にも此処へ来れたことに感謝しつつ、教室を出る。
｢奥の展示ブースがボードゲーム部の場所だったはずです。｣
｢ぜってぇ喜ぶよ。俺らは戻るから｣
『....え、来てくれないの』
｢えぇ、そうですね。2人でお話をしてください｣
これまでで1番黒く染った2人の微笑みに押され、廊下へと顔を出せば、そそくさと2人は来た道を戻っていく。
その場で突っ立っているのもなぁ、なんて考えてゆっくりと歩いていく。
彼と会うのに、余裕なんてある訳ない。
少しだけ震えてしまっている手を包むように押さえた。息を吸って酸素を取り入れれば、むせるように胸が痛い。
心臓の音がすぐ近くで聞こえるし、今にでも泣いてしまいそう。
カツ、カツ、っと近づいて行く度に、広まっていく不安と黒く塗りつぶされた君の顔。
貴方は、どんな表情で私を見てくれる?
『あ、あの、....アーシェングロット、さんは、いらっしゃいます、か』
泡のように小さく、酷くか細い声だった。
緊張で押し潰されそうになる中、ひょこっと視界に入ったのは背丈が近い重々しい機械を身にまとった子。
あ、と全身の力が抜ける。
場所を間違えたのか、と。
小刻みに揺れる指先を目の前の子はしっかりと捉えてくる。慌てて背中に隠そうとすれば、コテっと首を捻られた。
｢こんにちは!ようこそ、ボードゲーム部の展示ブースへ!!｣
呆気に取られていたが、すぐハッとする。
明るい声に一気に警戒心が消え去り、まずは此処の展示ブースについて聞こうと思った。
彼の肩越しにみえる室内を見てみる。
...生き物は、いざと言う時に何も発せられないらしい。
講堂の先に視線を向けた時、思わず出かけた言葉を飲み込んだ。
間違いない、彼だ。
ふわふわな銀髪にあの立ち姿、雰囲気は2年前とは印象が違うけれど、絶対そう。
驚いたように目を見開く彼と、視線が絡んだ。
クシャりと感情が入り交じって、目線がどんどん下へと下がっていく。
目の前の彼は、“お姉さん、心拍数、凄いよ”と呟いた。
後ずさって、今にでも逃げ出してしまいたい。
｢...Aさん......?｣
『ぅ、あ...ご、めんなさい』
周りの音が聞こえない。2人だけの世界に居るみたいだった。
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作者名：愛奈 | 作成日時：2021年1月2日 5時
