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骸side
「それは……そう、ですけどー……」
返す言葉が見当たらないのか、言葉をつまらせるA。
------そんなことを言って、本当は雲雀恭弥に会いたいんじゃないか。
自分の中で、そんな醜い感情が生まれたのがわかった。
「……A」
おもむろに、彼女の名前を呼んだ。
彼女が僕の方を向くと、身長差で必然的に上目使いになる。
……不覚にもときめいてしまい、思わず溜め息をつくと、呆れられたとでも思ったのか、Aが肩を揺らした。
……全く。ずっと前から呆れているというのに、今更だ。
雲雀恭弥との距離は後もない。……早く、何とかしなければ。どうすればいいかはわかっている。
最強な彼女の、唯一の弱点は-------
さらり、Aに掴まれていない方の手で、彼女の前髪をかきあげた。そして、その額に、そっと口付けを落とす。
「…………は？」
状況が飲み込めず、ポカンと口を開きながら固まるA。
……そして同時に、後方からの殺気が強まった。僕でも少し寒気がするほど。
-----------恋愛方面においての、耐性が無いこと。
……腕の力が弱まったところで、するりと腕を抜き離れる。
そのままクルリと彼女に背を向け、犬と千種がいる方向に向かって歩いて行く。
Aは、そんな彼の背中を呆然と見つめていた。
----------これでいい。
……これから雲雀恭弥とAが会い、彼が何をするのか、だいたい予想はついている。
その事を考えると、ふつふつとあの醜い感情がまた沸き上がってくる。
でも、それでも今はまだいいと思いながら、骸はいつものあの胡散臭い笑顔を浮かべるのであった。
Aside
「…ねぇ。」
肩に置かれた手と共に聞こえた声に、ハッと我に返る。
……って、あれ？ 僕、今骸に……！！？
「ねぇ。聞いてるの？」
赤くなった顔を誤魔化すためにうつむくが、強引にセンパイの方を向かされる。
「何、その顔」
ムカつく、と言うとセンパイはごしごしと学ランの袖で僕の額を擦った。
というか、
「センパイ、摩擦で痛いんですけどー。」
擦りすぎだわ。赤くなっちゃうじゃんか。
冷静に返せたのは、センパイの冷たく鋭い瞳と殺気のおかげである。全くもって嬉しくはないが。
「汚れがついてるよ」
「汚れて……」
さすがにひどくないか。
そう言おうと思ったが、センパイからの無言の圧力に押し黙る。
「……今日。学校だよね？」
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作者名：夢うさぎ | 作成日時：2019年5月3日 19時
