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骸side
「ほら、僕にも二口くださいよー」
思考が、停止した。
カラン、と音をたてて僕の手からスプーンがパフェの器の中に落ちた。
……今、何が起こった？
「はーやーくー」
ただ、Aが心なしかニヤニヤ笑っているから、僕はからかわれているんだろう。
……悔しい。
惚れた弱味、というやつなのだろうが、Aが相手となるとすぐに感情を動かしてしまう。
それ自体はいいのだ。ただ……
Aが、少しも照れていないところが悔しいし、……どこか、さみしい。
女々しいと自分でも思うが、恋というのはそういうものだろうとも思う。
だからこそ。彼女にも、少し、この気持ちを味わって欲しいのだ。
「あ、骸ー。口の横にクリームついてますよー？」
と言いながら手を伸ばしてくるA。
……丁度いい。
Aが僕の口を指でぬぐう。
そして、戻ろうとするその手を、パシリ、としっかり掴んだ。
「……骸ー？」
少し驚いた様子で僕に声をかけるA。
僕は彼女の手を自分の顔の前まで持っていき、そして……
……小さなリップ音をたてながら、そっと、口付けた。
「……はっ！？」
ボフンッ、と音が聞こえそうな勢いで顔を真っ赤にするA。
「クフフ……かわいいですね」
「え、いや、なに、して……！！」
そのまま、彼女の手を離さずに、下からのぞきこむように彼女を見上げる。
「顔……真っ赤ですよ？そんなにかわいい顔をされると、ここにキスしたくなります」
そう言って、彼女の唇に手を伸ばし、顎に手をかけて、親指で、そっとなぞった。
「なっ…ななななな！？！？」
「ああそうだ、僕のパフェが欲しいんでしょう？ほら、」
一旦手を離すと、口をパクパクさせている彼女の口に、もちろん自分のスプーンでパフェを運んだ。
本当にかわいい。
顔を真っ赤にして恥じらう彼女を、愛しいと思った。
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作者名：夢うさぎ | 作成日時：2019年5月3日 19時
