前世の記憶を持った異能探偵！

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木更津市直下実働第一遊撃部隊。

そう呼ばれる幻の部隊が、木更津の都市伝説に存在する。曰く、それは色々と七面倒な文字面をしているが、要するに木更津市の長である市長の私兵であると。
曰く、実働だ遊撃だと曖昧に誤魔化しているが、その活動内容は完全に非合法であると。

曰く、政敵や不都合な人物を自然死に見せかけて暗殺したり、不都合な情報が世に出かけた場合にそれを隠すように派手な爆破テロを起こしたり。木更津でなにか非日常的なことが起きたとき、８割はそれが関与していると。

当然、所属者も百本程ねじが外れた人間＿いや、人外ばかり。夜な夜な人の生き血を啜り、骨を噛み砕き、目玉を握り潰し、脳を抉って快楽を得る異常者の集まりだという。

その幻が、こちらだ。
「そろそろ本気でころす・・・」
「あー、ちょっと待って！この間遊園地のペアチケットあげたじゃないか！あれに免じて、許してよ」
「だから誰が使うんだそれを！」

睦月は頭を抱える。
そう、噂は８割方真実だ。だが、一つ決定的に違うところがある。

人の生き血を啜る化け物の集団ならば、まだ御しやすかっただろう。
だが、属しているのはこれ以上になく人間らしい人間たちだ。少々見せられない側面を拗らせた問題児たちだが。
あとそろそろ本当に車内が煩い。

睦月は一つ溜息をつくと、今までの会話を一掃するように真面目な口調で切り出した。
「それで、今回の任務というのはなんなんですか？」

＊
＊

午後３時。
３人は、野次馬から離れて温泉街の一角に立っていた。
なぜか、警官のコスプレで。

「ええ・・・」
睦月は困惑した。何これ。なんだこれ。
「説明しよう」
ライルが誰にともなく話し始める。

「着いたら早々事件が起きていて、しかもその容疑者に探偵社員がいると聞いた。我々の任務のうち一つは探偵社の弱体化。つまり今、警察の先遣隊に扮して孤立無援の容疑者くんに接触するのが一番手っ取り早いと考えたわけだ」

睦月は、それ誰にむかって言ってるんだ、というツッコミは差し控えることにした。でもこれは言わせてほしい。

「なんでこんなに早く警官コスプレが集まるんですか・・・」

「副業の関係で偶々持ってたんだ、褒めてほしいね」
ふふん、と露草が胸を張る。何してるんだこの人。
睦月はつっこむのを諦め、白い目で彼らを見る。

まあ、良い。方法は何にせよ、目的は達成されるだろう。
さて、行くとしようか。
三対の捕食者の目が、昼下がりの街に小さく輝いた。

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