第265話 ページ20
「・・・夢・・・見るんです・・・。」
「夢?」
グルッペンが訊ねると、Aはコクンと頷いた。
「師匠が、出て来て・・・私に、言うんです・・・。
『俺を、忘れて行くのか?』って・・・忘れる訳、ないのにっ・・・
そして、知らない人が、出て来るんですっ・・・。」
「・・・どんな奴だ?」
「“師匠の、兄を名乗る人”、が・・・私を、掴んでくるんです・・・。
『君の居場所は、牢の中だろう?』って・・・。」
そうポツリ、ポツリとグルッペンに話すAは、苦しそうに顔を顰めた。
「・・・ただの夢だ。
もしソレがAを苦しめるのであれば、俺等が解決しよう。」
「・・・苦しい、ですっ・・・。」
「ああ、苦しいな。辛いだろう。」
グルッペンは幼子を宥める様に、Aに優しく話しかける。
「・・・た、すけっ・・・て、くださいっ・・・。」
苦しそうな声で、顔を顰めて、か細い声で、Aはグルッペンにそう言った。
「_ああ、最初からそうするさ。
今日はもう疲れただろう、ゆっくり休もうかA。」
「・・・は、い・・・。」
Aが小さくそう答えると、グルッペンはギュッとAを抱きしめた。
「4連戦お疲れ様。明日は休みにしようか?」
「・・・授業、あります・・・。」
「休んでいい。元々授業に出ずとも追い越す位だ。」
「・・・訓練、明日も・・・。」
「それはA次第だな。」
少し震えた声のAと、優しい声色のグルッペンは、ポツリポツリと話をしている。
グルッペンはAを抱き上げたまま、仲間達の方へと歩いて行く。
「・・・近い内に、自分の足で。俺達の元へ歩み寄ってくれ。
俺達はAを迎え入れる。どんな形であれ、必ず。
だからその時は、真正面から歩み寄ってくれ。」
グルッペンにそう言われて、Aは少しだけ顔を歩いて行く方向へ向ける。
「Aー!大丈夫かー!?」
「グルさんまさか精神侵食とかしてへんよな!?」
自分を不安そうに見ながら、駆け寄ってくるメンバー達。
「Aっ!大丈夫かっ?疲れたし眠いんかっ?」
ゾムがグルッペンに駆け寄ると、グルッペンはゾムにAを預けた。
「ゾム、さん・・・。」
「今日はゆっくりしようなっ?
寝てもええし、ご飯食べてもええしっ、後ー・・・後ーっ・・・!」
ゾムはAを抱き上げたまま、あたふたとしている。
「・・・ゾムさん、慌て、すぎです・・・。」
「えっ!?あ、そ、そう・・・?」
ゾムが照れくさそうにすると、Aはクスッと笑った。
そして、静かに目を閉じた。
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作者名:眼目夢子 | 作成日時:2021年11月3日 16時